中国本土の人の台湾への渡航、パスポートは必要ない?
中国本土と台湾(中華民国)は不思議な関係である。中国本土の人がその不思議な関係である台湾を訪問するとき、はたしてパスポート(旅券)は必要なのだろうか?じつはパスポートは不要だ。しかし、かなり複雑な仕組みなので紹介したい。
1.中国人にとっての台湾
パスポートは必要ない?
日本人が台湾に旅行や仕事でいくときは、もちろんパスポート(旅券)が必要になる。中国人が台湾(中華民国)にいくときにはパスポートは必要なのだろうか?
調べて分かったことは、中国人が台湾を旅行するときにはパスポートを使うことはできない。大陸居民往来台湾通行証とよばれるパスポートに代わるものが求められる。この大陸居民往来台湾通行証の有効期限は5年間。
台湾だけでなく香港やマカオにいく場合も、中国人はパスポートではなく中華人民共和国往来港澳通行証とよばれるものを使わなければならない。香港やマカオはすでに中国に返還されている地域であり、国外に渡航するときに使用するパスポートを用いるのは適切ではないということだろう。
台湾に行くときに使用する大陸住民往来台湾通行証に、中国本土の公安部門が台湾への渡航許可にあたる団体旅行ビザ(Lビザ)や個人旅行ビザ(Gビザ)などを発行する。これは台湾当局が発行するのではなく、中国本土側が発行する。
- 台湾への旅行が開放されるまえは?
- 台湾への旅行が開放されるまえは、中国本土の人は香港やマカオなどを経由していた。渡航時にはパスポートを使い、商用ビザ(ビジネスビザ)を取得していた。
入台証とよばれるビザ
中国本土の人は、大陸居民往来台湾通行証と旅行ビザだけでは台湾にいくことができない。さらに台湾の内政部入出国及移民署が発行する中華民国台湾地区入出境許可証とよばれる証明が必要になる。一般的に入台証とよばれている。
2.台湾への入境制限
団体と個人で制限
この入台証の発行数は制限されている。団体旅行者は一日あたり7,300件、個人旅行者は一日あたり5,840件に限定されている(2014年8月現在)。中国本土では台湾旅行が人気で、連休などは入台証が取得できずに旅行にいけないということが報道されている。
団体旅行を展開している旅行会社は、団体旅行者向けの入台証が足りないケースを避けるために、個人旅行といつわって個人旅行向けの入台証を取得している場合もあるようだ。
個人旅行の開放は一部の都市にとどまる
中国本土のすべての人が台湾個人旅行にいけるわけではない。すこしずつ開放されてきているものの、いまのところ大都市を中心に36都市のみで台湾の個人旅行にいくことができる。
中国本土の台湾個人旅行は、2011年6月に北京、上海、アモイ(厦門)の3都市で開放。台湾個人旅行は大都市を中心にすこしずつ開放されている。2014年8月には4回目の開放として、大連市(遼寧省)、中山市(広東省)、無錫市(江蘇省)、太原市(山西省)など10都市が新たに開放された。
中国人の個人旅行は大変
中国人が台湾に個人旅行でいくばあい、日本人が思っている以上に手続きが大変だ。社会人の場合はつぎの内のひとつが必要になる。学生の場合は学生証または在学証明書が求められる。
- 年収12.5万元(約210万円)以上の証明
- 5万元(約83万円)以上の定期預金の証明
- ゴールドカード以上の金融機関のカードの保有証明
3.台湾人が中国本土に来るときは?
パスポートをつかって中国本土に入れない
台湾人が中国本土にくる場合もややこしい。台湾を離れるときは中華民国のパスポートで出国(または出境)し、中国本土に入るときは台湾居民来往大陸通行証とよばれるパスポートに代わるものを利用する。この通行証は台胞証とよばれる。
中国本土が中華民国のパスポートを認めていないため、台胞証をつかって入境しなければならない。ちなみに、香港やマカオの人が中国本土にくる場合、もちろんパスポートではなく港澳居民来往内地通行証とよばれる証明を用いる。この通行証は回郷証ともよばれる。
2003年までは直行便が飛んでいなかった
中国本土と台湾のあいだで、直行便が飛びはじめた歴史は古くない。自由に定期便が飛び出したのは2009年8月からと意外にもそれほど時間がたっていない。2003年ごろから一部でチャーター便として往来が開放されたものの、現在のように定期便が飛び出したのはまだあたらしい。
それまでは近くて遠い場所と言われており、基本的に香港またはマカオを経由して中国本土に入境しなければならなかった。(了)