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中国の全国人民代表大会(議会)とは?下院(衆議院)に相当?

日本人にとって中国の全国人民代表大会(全人代)の役割はわかりにくい。そもそも、中国だけでなく、日本の内閣や議会(衆議院、参議院)の役割の違いもわかりにくい。中国政治を理解するためには、全人代の存在を避けることはできない。

1.中国の議会の仕組み

中国の全国人民代表大会(全人代)とは?

中国にも憲法(中華人民共和国憲法)があり、その第2条で「中華人民共和国の一切の権力は人民に所属する。人民が国家権力を行使する機関は、全国人民代表大会と地方の人民代表大会である。」と明記されている。日本の国会にあたるのが全国人民代表大会で、地方議会(都議会や県議会、市議会など)にあたるのは地方政府の人民代表大会だ。

少し先回りして説明すると、中国には全国人民代表大会(全人代)だけでなく、全国政治協商会議(政協)というものもある。日本人にとっては全人代を日本の衆議院(下院)と考え、政協を日本の参議院(上院)と考えると理解しやすいだろう。この全人代と政協の全体会議は2つあわせて両会(Liang hui)と呼ばれている。

全人代の役割は?どんなことをしているのか?

この全人代はどのような役割をしているのだろうか?この全人代の最大の役割は立法機関であること。つまり、日本やアメリカの議会(国会)と同じように法律を作っている。全人代は憲法改正、刑事・民事の国家の法律制定や改正をおこなっている。それらの法律改正だけでなく、国家の主要人事の議決を行っている。

中国の国家主席(国家元首)や国家副主席の選出、国家主席の提案による国務院(内閣)の総理の決定、国務院(内閣)の総理の提案による副総理、国務委員(副総理級に相当)、部長・主任(大臣に相当)、軍隊、裁判所、検察などのトップ人事の選出・決定を行っている。

代表たちが集まる全体会議は年1回だけ!

この立法機関や国家機関の人事を決定にくわえて、国家予算の審議・承認も行っており、日本の国会の役割とほとんど変わらないのが実態だ。ただし、毎年1回開催される全体会議には3,000人近い代表(議員に相当)が参加するため、実質的には全国人民代表大会常務委員会という代表組織が実質的な運営をおこなっている。全体会議は形式的な賛成・反対を投票するような場になっているのが実態だ。

2.全人代の代表(議員)の実情

どのような人が全人代の代表に選ばれる?

この全人代には省、自治区、直轄市、特別行政区(香港、マカオ)の(地方)人民代表大会と中国人民解放軍から代表者(議員に相当)が選出されている。中国には55の少数民族が公式に認定されており、その55の少数民族からは必ず代表団が選ばれるようになっている。日本の国会議員の選出と異なり、一般人民が選挙で選ばれる仕組みではない。

中国の少数民族
中国の少数民族は、55の少数民族から構成されているわけではない。類似する民族を55の少数民族に集約していったというほうが正確だ。2000年の人口調査では74万人が55のいづれの少数民族に分類されない未識別民族も存在する。そのなかで貴州省に多くあつまる「穿青人」が67万人と最も多い。

代表の定員は最大3,000人!

この全人代の代表になると、任期は5年間。少なくとも毎年1回、全体会議が開催されている。第12期(2013年~2017年の5年間)は2,987人が選出が選出されたが、2015年の第三回大会のときには2,964人と辞職や死去などにより20数名の減少がみられた。中国の選挙法により全人代の定数は3,000人を超えないように規定されている(選挙法の第15条)。

2015年度(第12期第三回)の全人代は2015年3月5日~15日(10日間)開催されている。いっぽう、参議院に相当する政協は2015年3月3日~13日(10日間)開催されていて、全人代よりも毎年、数日早く開催されている。毎期5年の任期のため、2015年は第12期の3年目となっている。この全体会議は毎年1月~3月の第1四半期に開催されることになっていて、中国の春節(旧正月)明けに開催されることが一般的になっている。

3.全人代はどうような運営なのか?

いろいろな委員会がある!

この全人代は毎年1回開催される約3,000人規模の全体会議と少数の常務委員会の2つに大きく分けることができる。常務委員会は委員長、副委員長数名、秘書長(日本の幹事長に相当)、ほか数名で開催されている。この常務委員会の下には、弁公庁(秘書局、外事局、メディア局、人事局などの事務局)、法制工作委員会、予算工作委員会などの実務的な委員会が開催されている。日本の議会もいろいろな委員会が設置されており、日本と中国で表面的な大きな違いはない。

すべての法律が全体会議で審議されるのではなく、多くの法案は2か月に1回開催される常務委員会の定例会議で審議・制定されている。海外に常駐する中国大使(特命全権大使)の任命、全体会議閉会中の法律解釈・補足など議会の基本的な役割は常務委員会がすべて担っている。

全体会議には主席団と専門委員会は設置されている

毎年1回開催されている全体会議には主席団と専門委員会が設置されている。主席団は全体会議を主催する組織で、2015年(第12期第三回大会)では172人の主席団が選ばれている。この主席団のメンバーが全体会議や専門委員会を円滑に開催できるように運営している。

主席団以外には、各専門委員会が設置されている。民族委員会、法律委員会、財政経済委員会、教育科学文化衛生委員会など。ただし、10日間程度の全体会議で議論し、具体的な法案を作り出すというよりも、代表(議員)の意見・提案を参考に聞いておくというのが実情のようだ。

全人代、全国政協は北京で開催されている!

全人代はどこで開催されているのだろうか?毎年1回開催されている全体会議は、北京市中心にある天安門広場の西側にある人民大会堂で開催されている。人民大会堂は中華人民共和国の建国10周年を記念した事業のひとつとして建設された。ちょうど建国10周年にあたる1959年に完成している。広さは東京ドーム3個分の15万㎡。

中国の国家指導者が海外の来賓と会談している場面がテレビで報じられるとき、人民大会堂の国家接待庁などの会議室で行われていることは少なくない。なお、全人代だけでなく全国政協も人民大会堂で開催されている。(了)

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