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北京、上海の海外旅行者への税還付政策、その仕組みは?

北京と上海ではじまった海外旅行者への税還付政策。日本の海外旅行者に対する免税政策と異なり、対象となる商品を購入するときには一旦、税金を負担しなければならない。中国を出国するときに、正しい手続きを行うと還付される仕組みだ。

1.中国の海外旅行者への税還付

北京と上海で2015年7月からスタート

北京と上海で2015年7月1日から海外旅行者(香港、マカオ、台湾含む)の買い物に対して、一定の条件を満たしていれば11%分の増値税(日本の消費税に相当)を還付する政策がスタートされた。中国の増値税は17%のため、その増値税のすべてを還付するのではなく11%分だけ還付するもの。

この税還付の対象となっている百貨店などで、対象商品を1日あたりその店舗で500元(約1万円)以上購入して、規定された手続きを行うと11%分の増値税が還付される仕組み。ただし、還付手続きをする代理機関が2%の手数料を取るため、実際に還付されるの購入額の9%となっている。

中国の増値税とは?
中国の増値税(value-added tax)は、日本の消費税に相当する。中国の店頭価格(小売り)には、すべて増値税込みで表示されているため、中国人の多くは税負担している認識は少ない。基本的に17%の税率であるが、小規模企業は3%、一部の業種では低税率の13%とすべて一律というわけではない。1994年1月に導入された。

じつは2011年から海南省で実施されていた

この税還付の制度は、今回はじめて中国ではじまった政策ではない。2011年1月から海南省で先行してスタートされている(2011年1月施行「海外旅行客出国時の税還付の海南省の試験的な管理弁法」)。今回はこれまでの海南省に加えて、あらたに外国人旅行者の多い北京市と上海市に税還付政策が導入されている。海外旅行者の消費活性化や旅行客の増加を意図している。

海南省の税還付政策は効果が少なかった!?

外国人旅行客がそれほど多くない海南省では、それほど政策効果が出なかったと報じられている。2014年度の海南省の海外旅行者(香港、マカオ、台湾含む)は66万人、いっぽう、北京市は427万人、上海市は791万人を記録している。海南省で税還付政策の効果が低いと言われた理由のひとつは、税還付の対象となる商店が少ないと言われている。

これまで海南省では税還付の対象商店になるには売り場面積が2,000㎡以上という条件があった。このような反省から新しい税還付政策からは売り場面積の制限は取り払われている。ちなみに、これまでは1日あたりその店舗で800元(約1.6万円)以上が税還付の最低額となっていた。今回からは減額された500元が最低額として設定されている。

2.中国の税還付政策を理解する

だれが対象になる?頻繁に一時帰国する日本人は対象?

この税還付の対象者は正直わかりにくい。この税還付政策は2015年6月2日に公表された「海外旅行客出国時の税還付管理弁法」という法律にくわしく規定されている。この第2条に対象者が明記されていて、中国本土の滞在日数が連続して183日未満である外国人旅行者(香港、マカオ、台湾含む)とされている。この183日を超えているかどうかは、パスポートの最終入国日から店舗が判断することになっている。

この法律の第20条の第5項をみると「税還付対象の商品を購入した日から滞在日数が90日を過ぎていないこと」と明記されている。税還付の対象者になるためには、中国の滞在期間が183日未満で税還付商品を購入してから90日を過ぎずに出国すると税還付されることになっている。(1)中国の滞在日数<183日(2)購入日~出国日までの期間<90日、この2つの条件を満たしている人が税還付の対象になる。

あくまでも海外旅行者となっているので、条件を満たし頻繁に日本に帰国する中国生活者は対象になるかどうかは不明だ。なお、日本では非居住者のみに限定されており、長期的に日本に滞在する意思がある人は対象外になる。具体的には日本で住民票登録していたり、在留カード(旧外国人登録証明書)を持っている人は対象外になっている。

どこで税還付の商品を購入できる?

現在のところ、税還付商品を販売しているのは外国人旅行者が利用する高級百貨店などの一部の店舗に限定されている。税還付商品を販売する商店は、国税局に登録申請しなければならない。この税還付商品を販売する店舗の許可を得たら、店舗の見えやすいところに「退税商店(TAX FREE)」という目印(プレートやシール)を置かなければならない。なお、増値税17%のうち、実質9%が還付されるので「TAX FREE(免税)」ではなく「TAX REFUND(税還付)」ではないだろうか?

(写真1)「退税商店(TAX FREE)」とかかれたプレート

(写真1)「退税商店(TAX FREE)」とかかれたプレート

3.税還付の方法は?

税還付対象商品の購入時の注意点!

税還付商品を販売している店舗で購入するとき、どのような点に注意しなければならないだろうか?まず、パスポートは必ず必要だ。パスポートにより最後に中国本土に入国した日が確認され、その日付から183日未満であることが確認されることになっている。

商品購入時には税還付に必要な「離境退税申請単(出国時税還付申請票)」と専用の機械で発行された増値税普通発票(正規の領収書)を取得する。この2つがなければ出国時に税還付申請をすることができない。増値税普通発票は普通のレシートと異なるの注意が必要だ。

どこで税還付の申請をするのか?

どこで税還付の申請をするのだろうか?国際空港や港(ポート)で中国本土を離れるところには、税還付を行う銀行の代理機関が用意されている。「海外旅行客出国時の税還付管理弁法」の第18条にもとづくと、税還付商品の税関による現物検査が行われることになっている。

この代理機関で手続きするときには、パスポートと離境退税申請単(出国時税還付申請票)、増値税普通発票(正規の領収書)の3つが必要になる。税還付の合計額が1万元(約20万円)を超える場合は、銀行振込の方法で支払われ、1万元未満の場合は現金で受け取ることができる(第22条)。

税還付の仕組みは日本の免税政策に似ている?

中国の税還付政策は実質的に税還付は9%(手数料の2%除く)。日本の消費税率の8%(2017年4月から10%)に近い。中国の対象金額は店舗あたり最低500元(約1万円)となっており、日本の一般物品1万円、消耗品5,000円とかなり似ている。

中国政府が日本で効果をあげている外国人旅行者への免税政策を参考にしているのは間違いないだろう。ただ、この海外旅行者に対する免税政策を実施しているのは日本だけではなく、米国、ヨーロッパ、韓国、カナダ、ブラジル、アルゼンチンなど多くの国・地域で導入されている。日本と中国は地理的に近く、海外旅行者の国籍も似ており政策的に近くなったのかもしれない。(了)

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