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中国株の信用取引、カラ売りできない場外配資(外部信用取引)!

外国人投資家が自由に取引できない中国(上海・深セン)株式。少しずつ外国人投資家にも開放され、中国株に興味をもっている人も少なくないのでは?中国の特殊な場外配資と呼ばれる信用取引の仕組みを理解しておいたほうがいいだろう。

1.中国株の信用取引

そもそも株取引の信用取引とは?

中国の株取引に占める信用取引の割合はニューヨーク証券取引所や東証一部よりも高いと報じられている(2015年5月21日付の日本経済新聞(電子版)「中国株の信用取引膨張 残高38兆円、1年で5倍」)。そもそも、株取引の信用取引は証券会社で信用取引口座を開設して、委託保証金(いわゆる担保)を預けて、その委託保証金の数倍のレバレッジで取引するというもの。

もし、株価が大幅下落して証券会社が設定している委託保証金と損失額の比率を割り込むと、日本では追証(おいしょう)と呼ばれる追加の保証金を入れなければならない。その追証を入れないと強制的に売却される仕組み。中国では証券会社が設定している保証金比率を割り込むと通告がきて、期日までに追証を入れないと強制的な反対売買(損切り)が発生し損失額が確定してしまう。

証券会社の信用取引と場外配資という仕組み

中国には証券会社で信用取引口座を開設するだけでなく、場外配資(外部信用取引)とよばれる融資会社がレバレッジのある株取引の融資を行っている。これは日本にはない仕組みで、日本のメディアは中国の一般投資家は消費者金融などで資金を借りて株式売買をしていると報じているところもあるが正確ではない。

中国全体で1万社以上が株取引の融資会社として存在していると言われている。これらの融資会社は中国語で配資公司といい、配資(資金を配る/貸し出す)会社という意味だ。普通の融資会社との違いは、配資公司は株取引専門の融資会社で取引時の株式証券が担保になっている。

2.証券会社の信用取引を利用しない理由

普通の投資家にはハードルが高い証券会社の信用取引!

中国の個人投資家は証券会社の信用取引口座を開設せずに、なぜ場外配資(外部信用取引)の信用取引を利用しているのだろうか?その理由は、中国の証券会社の求める信用取引の条件が高いすぎて、多くの投資家は利用できないからだ。

中国の証券会社で信用取引を行うためには、株取引歴が半年以上あり、最低50万元(約1,000万円)の証券資産をもっていないと利用することはできない。普通の個人投資家はそれほど余裕資金を持っていない。

中国証監会から2015年7月に「証券公司融資融券業務管理弁法」という規定が公表されていて、そのなかに詳しい条件が規定されている。いっぽうで、証券会社の信用取引にかかる金利は年利9.0%前後で、場外配資(外部信用取引)よりも大幅に低い金利になっている。

場外配資(外部信用取引)は年利ではなく、1か月ごとの金利である月利を採用しているところが多く、その月利は1か月あたり1.0%~2.0%が一般的な相場になっている。この月利は取引金額、融資期間、レバレッジ比率などによって違いが発生する。融資会社によっては1日あたりで金利を設定しているところもある。

証券会社の信用取引はルールが緩和された

この管理弁法が公表されるまでは証券会社の信用取引は最長6か月、損失額が信用取引するための預け金(保証金)の70%に達すると強制的に損切りされる仕組みだった。この70%という損失額と保証金の比率は日本の信用取引と大きな違いはない。

たとえば、預け金(保証金)の10万元(約200万円)を使って100万元(約2,000万円)の信用取引を行った場合、株式が100万元から93万元に下落すると強制的な損切りが発生してしまう。つまり、預け金(保証金)の70%に相当する7万元の損失が発生すると、強制的に損切りされて7万元の損失が確定する仕組みだ。

新規定により、信用取引の期間と損切りの割合は証券会社と顧客の契約で決められるように変更されている。また、これまで証券資産が50万元を割り込むと強制的に損切りされていたが、その制限も取り払われている。

そもそも場外配資(外部信用取引)は合法なのか?

結論は、いまのところはグレーとなっている。融資会社によると、これらの取引きはあくまでも個人への融資(民間借貸)という形態をとっている。さらに、中国人民銀行(中央銀行)が定める最大金利である基準貸出金利の4倍までに収まるように運営していると言い、この融資の正当性を主張している配資会社も見られる。

3.信用売ができない場外配資の仕組み

証券会社の信用取引は?

ハードルが高いものの証券会社では、信用買と信用売(カラ売り)のどちらも可能だ。中国で信用取引は融資融券(両融)と言われているように、融資(信用買)と融券(株券の融通)という意味に分けることができる。この融券(株券の融通)で融通された株券を売却して期日まで買い戻すことで、日本語でいう信用売(カラ売り)を行うことができる。

証券会社の信用取引は最大4倍までに制限されている(証券公司融資融券業務管理弁法の第20条)。日本とそれほど変わらない(日本では最大3.3倍まで)。

場外配資(外部信用取引)はカラ売りできない!

いっぽう、場外配資は信用買しかできない。あくまでも配資(資金の提供)しかなく、現物株を融通する仕組みはなく、証券会社が提供している信用売(カラ売り)をすることはできない。株式市場が上昇しているときは信用買で利益が出るものの、株価の大幅な下降局面では株式のカラ売りすることはできず、融資会社のシステムにより強制的に損切りが発生してしまうことも多い。

しかも、場外配資(外部信用取引)の仕組みを利用しているのは、証券投資残高が50万元(約1,000万円)未満で証券会社の信用取引を利用できない個人投資家ばかり。証券会社の信用取引では保証金の最大4倍までの取引とされているが、場外配資(外部信用取引)ではそれ以上のレバレッジで融資している融資会社もあると報じられている。株価暴落時にはどのような事態になるか予測がつかない。(了)

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