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中国株の場外配資は縮小に!恒生HOMSシステムとは?

中国株が落ち着きを取り戻している一方で、場外配資とよばれるグレーな存在だった信用取引が違法と判断されて、一気に中国からなくなりそうだ。この場外配資の拡大を支えた恒生電子のHOMSシステムとはどのようなものだったのか?

1.中国株の場外配資(外部信用取引)

そもそも場外配資とは?

上海証券取引所に上場している金融関係のソフトウェア企業の恒生電子(浙江省杭州市)が注目を集めている。恒生電子は中国株の信用取引をサポートする株取引管理システムの開発会社として成長してきてが、ここ最近の株価暴落により金融関係者や一般投資家から疑問の目で見られている。この恒生電子が提供しているのはHOMS(HUNDSUN OMS)という株取引システムで、場外配資とよばれる民間融資会社のあいだで利用が広まっていた。

そもそも中国株取引の場外配資とは、どのような存在・仕組みなのだろうか?中国には大きく2つの信用取引があり、ひとつは証券会社が提供している委託保証金の数倍まで取引可能な信用取引。もうひとつは、これまでグレーな存在として扱われてきた民間融資会社が提供する場外配資とよばれる信用取引だ。

これらの民間融資会社は配資公司とよばれ、資産規模の小さい一般投資家に保証金の数倍の取引ができるレバレッジ取引を提供している。配資公司は分配資金(資金提供)という中国語の略称で、ここ最近、中国国内で急速に広まった言葉だ。

2015年7月12日に違法と判断された場外配資!

もともと場外配資(外部信用取引)は中国で違法になっていないか疑問を持つ人も少なくなかったが、これまでは大きな話題にはならなかった。ここ最近の中国株の大きな調整により、中国証券監督管理委員会(中国証監会)が2015年7月12日に発表した「違法な証券業務活動の従事を整理整頓することの意見」で場外配資(外部信用取引)の正当性は完全に否定されてしまった。つまり、違法という判断だ。

中国証券監督管理委員会とは?
中国証券監督管理委員会とは、全国の証券、先物金融取引市場の公正を確保するために証券取引の監視を行っている政府部門。1992年10月設立。日本の証券取引等監視委員会に相当。証券市場のマクロ政策なども担っている。

場外配資をやめる配資公司、場外配資は縮小に!

中国の配資公司はインターネットを通じて簡単に信用取引を仲介していたが、場外配資が違法と判断されたことより、一気に縮小に向かっている。配資公司の蚂蟻配資(mayipeizi.cn)や米牛(miniu98.com)は新規口座開設を取りやめただけでなく、従来の信用取引口座のユーザーも追加で保証金を入れることはできなくなった。

米牛(miniu98.com)は株式を担保にした場外配資から、利息期限がきていない理財商品(外貨建て定期預金や投資信託など)などに対する「存単質押貸款」(預金証書の抵当ローン)に移行している。形を変えて株式市場に戻ってくる可能性はあるのだろうか。

2.場外配資と恒生HOMSシステム

恒生HOMSシステムとは何なのか?

中国の場外配資を支えていたのが恒生電子(浙江省杭州市)をはじめとするシステム会社。中国証券業協会の2015年6月30日の発表によると、もっとも市場シェアの高い恒生HOMSだけで4,400億元(約8.8兆円)規模。確認されている場外配資全体の88%を恒生HOMSが占めている。

最大手の恒生HOMSのほかに、上海銘創(システム)は360億元(約7,200億円)、同花順(システム)は60億元(約1,200億円)の取引規模となっている。ただし、この金額規模はHOMSなどのシステム上の資産規模を指しているのか、信用取引規模を指しているのか明確に指摘されていない。

これらのシステムは、もともとは投資ファンド向けに開発された証券取引システムで、メイン取引口座の下部に複数のサブ取引口座をバーチャルに開設することができるのが特徴だ。(1)各トレーダーの取引業績管理をするため、(2)トレーダーごとに損失(リスク)管理ができる、ことで少しずつ知名度を高めていった。そのようなシステムにどのような経緯か不明だが、株式専門の融資会社(つまり配資公司)に幅広く利用されるようになった。

3.中国の信用取引規模

中国株暴落に大きな影響はなかった?

2015年6月後半~7月前半の中国株は場外配資が引き起こしたものだろうか?中国でもこの話題は少なくない。恒生電子が2015年7月13日に公表した「HOMS関連状況の説明公告」によると、2015年6月15日~7月10日に上海証券取引所と深セン証券取引所の両取引所の取引高28.8兆元(約576兆円)のうち、HOMSシステムを通して保証金不足で強制的に反対売買が行われたのは全体の0.104%の301億元(約6,020億円)にすぎないと公表している。

この数値を見る限りでは、場外配資の信用取引規模が大きくなって、株価急落に大きな影響を与えたとは言えない。

中国の信用取引規模は1.9兆元(約38兆円)!?

中国に大きく2つある信用取引のうち、場外配資(外部信用取引)の規模は約5,000億元(約10兆円)。もうひとつの証券会社が行う正規の信用取引残高は2015年7月16日時点で1.4兆元(約28兆円)と中国証券金融株式会社(証金公司)が公表している。この2つの数値を足し合わせると中国の信用取引規模は1.9兆元(約38兆円)と推定することができる。

中国証券金融株式会社とは?
中国証券金融株式会社は、証券会社に信用取引のための資金を提供したり、株式証券を貸し出したりしている国策の証券金融会社。証金公司と呼ばれる。日本の日本証券金融株式会社(日証金)に相当。公式ホームページで信用取引規模を公表している。

ただ、場外配資(外部信用取引)の規模を5,000億元(約10兆円)と推定しているのが正しいか不透明で、把握できていない融資会社がたくさん潜んでいる可能性は否定できない。

中国の高齢者は信用取引についていけているのか!?

中国の証券会社の支店には、株式市場が開いているあいだは多くの年配の一般投資家が集まっている。彼らはスマートフォン(スマホ)やパソコンで株式売買ができず、証券会社が用意しているタッチパネル式の端末をつかって取引を行っている。彼らは証券会社や配資公司の信用取引の仕組みを理解して利用できるだろうか?難しいだろう。

(写真1)証券会社の支店に集まる年配の一般投資家(上海市)

(写真1)証券会社の支店に集まる年配の一般投資家(上海市)

 

証券会社や配資公司の信用取引の仕組みを理解するよりも、マンションなどの不動産を抵当にして銀行や不動産会社から資金を借りてしまうほうが彼らにとっては簡単だろう。これらの融資資金はもちろん、証金公司が公表している信用取引残高には出てこない。中国株の信用取引規模の実態はどのくらいなのだろうか?(了)

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