外国人でも投資可能!中国株式市場の上海株(A株)
これまで外国人投資家にオープンにされていなかった中国株。しかしながら、中国株も少しずつオープンになっており、かつては中国本土の投資家だけに限定されていた人民元建てのA株も、いまでは外国人でも取引可能になっています。
1.これまで投資できなかったA株
香港経由で外国人も上海A株の購入可能に!
中国本土には上海証券取引所と深セン証券取引所の2つの株式市場があります。それらの証券取引所のなかには人民元建てで取引されるA株と外貨建てで取引されるB株の2つの株式があります。ちなみに、上海証券取引所のB株は米ドル建てで取引されていて、深セン証券取引所のB株は香港ドル建てで取引されています。
これまでは中国本土の投資家はA株を売買し、海外の投資家はB株を取引するというように区分けされてきました。そのような中国株に適格外国人機関投資家(Qualified Foreign Institutional Investors、QFII)とよばれる一部の海外機関投資家は人民元建てのA株が一定の範囲内で取引できるようになり、2014年11月から香港経由で一般投資家でも上海A株を購入できるようになりました(深センA株はいまのところ取引できません)。中国株の中心であるA株が少しずつオープンになってきています。
これまで外国人投資家はA株を購入できなかった!!
中国本土は中国の株式市場や人民元通貨のグローバル化を段階的に進めています。さらなる中国株と人民元のグローバル化の施策として、香港証券取引所と上海証券取引所では株式売買の相互取引プログラムというものを2014年11年から導入しています。この相互取引プログラムは香港と上海を投資マネーが行き来することより「直通列車」とも呼ばれています。
これはどのような仕組みでしょうか?香港証券取引所を経由して、外国人でも上海証券取引所に上場しているA株を1日あたり上限130億元(約2,600億円)、総額3,000億元(約6兆円)まで取引が可能になりました。香港では非居住者である香港以外に住んでいる外国人でも株式取引ができるため、事実上、香港を経由して世界から中国株式市場のA株が取引できるようになりました。
また、中国本土で証券口座に残高が50万元(約1,000万円)以上ある投資家であれば、上海証券取引所を通じて香港証券取引所の株式売買ができるようになりました。こちらも1日あたり上限105億元(約2,010億円)、総額2,500億元(約5兆円)の取引が可能になっています。
2.資格を得た外国人投資家だけが取引きできる制度
適格外国人機関投資家(QFII)とは?
適格外国人機関投資家(QFII)とは一体どのような投資家でしょうか?日本やアメリカでは海外投資家は原則、自由に株式取引をすることができます。これまで中国本土では自由に取引することができませんでした。そのような閉鎖された株式市場を段階的にオープンにしていくため、2002年に適格外国人機関投資家(QFII)という制度がはじまりました。この投資家には投資限度枠を設定し、その枠内で外貨を人民元に両替し、中国の人民元建ての株式(A株)や債券の取引を認めてきました。
さらに、香港やシンガポールなどの一部の地域の投資家に限定した人民元適格外国人機関投資家(RQFII)という資格もあります。これは資格を得た外国人投資家が海外に保有している人民元で中国本土の株式や債券などの取引をおこなう制度です。
2013年1月時点で適格外国人機関投資家(QFII)は800億ドル(約9.6兆円)、人民元適格外国人機関投資家(RQFII)は2,700億元(約5.4兆円)が取引資格を得た機関投資家の取引き上限額として公表されています。
中国で人民元を稼いでも株式や債券投資はできない!
そもそも、中国で事業をしている外資企業(外商投資企業)は中国国内で人民元を稼いでも中国の株式や債券に投資することはできません。数年前までは貿易取引を装った投機マネーの国内流入を懸念し、いろいろな規制により不動産や株式市場、ほかの通貨にくらべて高めの金利がついている人民元建て債券や預金への流入による人民元の急激な為替レートの上昇を未然に防いできました。急激な人民元高によってグローバルな競争のなかでコスト競争力を失ってしまうことを恐れていたからです。
そのような背景のもと、経済発展にともない人民元が決済通貨として少しずつ世界中に広まり、数年まえよりも通貨の安定性が高まってきました。さらなる人民元や中国株の安定化の施策のひとつとして、資格を与えた海外投資家のみに中国証券市場への人民元建ての取引きを許可してきた、その制度が適格外国人機関投資家(QFII)というものです。
3.中国・香港の株式市場の基礎情報
なぜ中国本土には外貨建てのB株があるのか?
上海証券取引所に上場している外貨建てのB株は2015年6月25日時点、たった53社しかありません。いっぽう、上海証券取引所のA株は1,052社もあります。ここ数年の動向として、外貨建てのB株の売買取引高が少ないため香港証券取引所のH株に転換しようと考える企業も出てきています。ちなみに、H株とは香港証券取引所に上場している中国本土の企業の株式です。中国本土の企業とは、中国本土に会社登記されている企業を指します。
では、そもそもなぜ上海証券取引所や深セン証券取引所に外貨建てのB株が存在しているのでしょうか?もともと、上海証券取引所も深セン証券取引所も1990年代前半に設立されており、その頃は企業が外貨の資金調達に苦労していたという経緯があります。そのような時代のなか、外貨を直接調達できるB株という仕組みにメリットがあるとして中国政府が1992年に創設したものです。
この外貨建てのB株は売買取引高が少なくなっているため、中国政府は2001年2月から中国国内の投資家にも取引を開放しています。
深セン証券取引所の中小企業板や創業板とは?
日本には東京証券取引所(東証)の第1部、2部だけでなく、ベンチャー企業向けのジャスダック(JASDAQ)やマザーズという株式市場があります。ジャスダック(JASDAQ)やマザーズは東証よりも上場基準が緩和されていて、将来的に成長見込みの高い企業が上場しています。
中国の株式市場でもジャスダック(JASDAQ)やマザーズに相当する成長株市場があります。深セン証券取引所が開設している中小企業板や創業板です。この中小企業板や創業板も中国で成長見込みの高いベンチャー企業が上場する市場となっています。(了)