中国の人事档案とは何か?保管料まで徴収されている
中国に存在する人事档案という名前を聞いたことがあるだろうか?中国には戸籍(中国語では戸口簿)以外にも、学歴、賞罰、党籍などを記録した個人情報ファイルとして人事档案が存在する。具体的に人事档案とはどのようなものなのか?
1.中国の人事档案
中国の人事档案とは?
中国には人事档案とよばれる個人情報を記録した人材ファイルが存在する。この人事档案には戸籍に関する基本情報から党籍、学歴、勤務年数、過去の表彰受賞から懲罰まで記載されている(と言われている)。
この人事档案は大学に進学するときや、公務員、事業単位(独立行政法人に相当)、国有企業などの政府関連機関に就職するときに必要になる。
自分で人事档案を保管できない
この人事档案は、政府が管理する人材市場や人事服務中心とよばれる人事档案を管理できる機関に保管されていなければならない。政府に関連する機関などは、その機関自体が保管部門をもっている場合もある。この人事档案は、学校を卒業するまでは学籍档案とよばれている。
この人事档案は自分自身で中身を見ることができない。なんらかのタイミングで人事档案を手にして中身を開けてしまうと、人事档案が死んでしまうという意味の「死档(スーダン)」とよばれる状態になり、その人事档案の信頼性が失われてしまう。
2.いまの中国社会での人事档案の位置づけ
人事档案は必要なのか?
中国人にとって人事档案は必要なのだろうか?むかしの計画経済時代の遺産ともいわれている人事档案。中国人にとっては大学進学や政府関連機関への就職など以外では人事档案が必要になることはほとんどないようだ。
計画経済時代から社会主義市場経済という名称にかわり、実質的には資本主義経済になっている現在、中国社会の仕組みは大きく変わってしまった。たくさんの国有企業が解体され、むかしほど政府関連の単位(職場)とよばれる機関は多くない。
民間企業や外資企業では人材を採用するときに人事档案を見ることができず、履歴書や面接などで採用の判断をしている。
中国社会の管理システムの変化
社会の管理するシステムは以前にくらべて、社会保険(医療保険、養老保険など)、個人の信用情報(借入、クレジットカードなど)、居住証などに広がっている。いまだに紙で保管されている人事档案の必要性はますます下がっていきそうだ。
そのような中で、人事档案の保管を重視せず、ほったらかしにする棄档(チーダン)とよばれる状態の人も多い。人事档案を放置していても、日常生活で困らない人が増えているからだ。
3.人事档案の保管料
保管料の負担が少なくなる方向
この人事档案の保管は、地域によって異なるものの毎月10元~12元(約165円~200円)ほど保管料を徴収されている。ただし、この人事档案の保管料は今後はなくなる方向に向かっていきそうだ。
2012年12月に国家発展改革委員会と財政部が発表した通知で、人事档案の保管料について方向性を打ち出している。各省(自治区、直轄市)の物価や財政を主管している部門は「国が規定する保管料の標準より高く設定してはいけない」と規定されている。
この通知によると、個人が委託する人事档案の保管料は、毎月15元(約250円)から10元(約165円)に減額すること。職場(単位)が委託する保管料は、毎月20元(約330円)から12元(約200円)に減額しなければいけない。おそくても2016年までに人事档案の保管料の徴収を取り消さなければならないと方向性が決められている。
3.地域での人事档案の保管料の動向は?
上海市の状況
上海市では2011年から個人が委託する人事档案については保管料を徴収していない。職場(単位)が委託する人事档案の保管料は一人あたり毎月12元(約200円)を徴収しているが、上海市では2016年から人事档案管理費を徴収しない予定である。
上海市の人材服務中心は1996年の中共中央組織部(中組部)と人事部(現在の人力資源和社会保障部)の規定にもとづき、基本的に人事档案を管理している。
- 中共中央組織部とは?
- 中共中央組織部とは、正式名称は中国共産党中央委員会組織部という。中国共産党の党員に関する教育、制度、党費管理などをおこなっている。毛沢東も組織部長をつとめたことがある。
1990年から上海市では職場(単位)が委託する人事档案の管理には毎月20元を徴収し、個人が委託する場合は毎月15元を徴収していた。2011年から個人からは保管料を徴収せず、職場(単位)の委託のみ毎月12元を徴収している。
その他の地域は?
一部の地域では人事档案の保管料の徴収を取り消している。江蘇省、山東省青島市、浙江省安吉県、河北省廊坊市などは人事档案の保管料を取り消している。
北京市は身体障害者、失業者などの人事档案の保管料を免除している。さらに人事档案の保管料の免除や減額をすすめ、2016年には費用徴収を撤廃する予定。広州市の南方人材市場は2015年末に費用徴収を撤廃する予定だ。(了)