中国・深センの分譲マンション上昇!新政策により過熱化!
中国は2015年3月末から住宅取引の緩和政策を打ち出している。その結果、広東省深セン市をはじめて、全国的に不動産の上昇がはじまっている。深セン市は急騰と言ってもよいほど価格が上昇し、取引にかかわるトラブルも報じられている。
1.広東省深センの分譲マンション
中国の住宅価格はふたたび急騰へ!
ここ最近は中国の不動産価格が上昇に転じていると報じる記事も少なくない。日本経済新聞電子版の2015年6月26日付の「上海 株と不動産 シーソー相場」によると、最近の中国株(上海、深セン両取引所)が高値をつけてから下落に転じている一方、中国の住宅相場が上昇していることを報じている。
なぜ中国の住宅相場は上昇してきたのだろうか?中国の現地紙でも分譲マンションの価格が上昇してきたことにより、中古マンションの売買をめぐるトラブルを報じている。2015年7月6日付の上海現地紙の東方早報(A12面)によると、住宅価格が最も急騰している広東省の深センでは、中古マンションの売買価格を決めてからマンションを引き渡すまでに10%~20%も取引相場が上がったため、当初決定した取引価格を撤回した売主と買主のいざこざを報じている。
当初は建築面積153㎡(4LDK)を350万元(約7,000万円)で売却する契約を結んだが、購入代の送金までに時間がかかり、約2か月のあいだに450万元(約8,000万円)まで近隣の住宅相場が上昇したことで売主が売却契約の撤回を言い出したというわけだ。中国でも日本と同じように売買契約から手付金の残りの残金決済までに時間がかかるのが一般的だ。そのあいだにマンション価格が100万元(約2,000万年)も上昇してしまいトラブルになってしまった。
- 中国の建築面積とは?
- 中国の建築面積とは、実際に利用できる部屋の面積に敷地内の共有スペース(配電室、共有廊下、エレベーターホールなど)の分配された面積です。中国の高層マンションでは建築面積の70%~80%が使用面積(部屋の面積)となる。
2015年3月30日の新政策で値上がり加速!
じつは2015年3月30日に中国人民銀行、住房城郷建設部(国土交通省に相当)、中国銀行業監督管理委員会(中国銀監会)の3つの部門が「個人住宅ローン政策に関するいくつかの通知」を公表している。同時に、財政部国家税務総局より住宅売却にかかる営業税(消費税に相当)の課税条件が緩和されている(「個人の住宅転売にかかる営業税調整に関する政策の通知」)。これらの通知により、住宅ローンと税負担の条件が大幅に緩和されていることが今回の住宅価格急騰の背景だ。
その結果、とくに広東省の深センの住宅相場は、新築マンション+7.7%上昇(前年比)、中古マンション+9.1%上昇(同)と市内の平均取引価格が大幅に上昇していることがわかる(2015年5月 住宅販売価格、国家統計局公表)。
- 中国銀行業監督管理委員会とは?
- 中国銀行業監督管理委員会は、金融機関(主に銀行)の監査、規制の制定などを行っている。略称は中国銀監会、英名はChina Banking Regulatory Commission(CBRC)。日本の金融庁に相当する。2003年4月設立。
2.住宅価格のテコ入れ政策
住宅価格の低迷により規制強化から緩和に!
中国では過熱する不動産価格の上昇を抑えるため、2010年4月から段階的に住宅ローンの申請条件などを厳しくしてきた背景がある。ここ最近の中国経済の減速懸念もあり、住宅価格もここ1~2年ほどは低迷していた。
そのような中、2014年ごろから地方政府が独自に住宅ローン規制の緩和を行い、中央政府である国務院(内閣に相当)が2015年3月30日、全国的に住宅ローンの緩和政策を導入したという経緯だ。
2軒目の頭金比率の引き下げ!
すでに住宅を持っていて住宅ローンを完済していない人でも、2軒目の住宅が購入しやすくなった。2軒目の住宅価格の40%以上の頭金を支払えば、新たに銀行から住宅ローンを借りることができるように変更された。これまでは取引総額の50%以上の頭金にくわえて、通常よりも金利が上乗せされた住宅ローン(中国人民銀行が公表する基準金利の110%)しか借りることができなかった。
住宅積立金の利用者は頭金比率は20%!
はじめて住宅を購入する人で住宅積立金という公的ローンを利用する場合は、住宅価格の20%以上の頭金でよいことになった。これまでは最低30%以上の頭金が必要だった。2件目を購入する場合も、すでに住宅ローンを完済していれば、頭金30%以上で新たに住宅積立金をつかった公的ローンを組むことができるようになった。
- 中国の住宅積立金とは?
- 中国の住宅積立金は、企業と個人が拠出する住宅に関する積立金。サラリーマンは加入義務となっている。拠出された積立金はすべて個人の所有になる。住宅購入のための貯蓄という位置づけだけでなく、積立額に応じて低利率の住宅ローンを借りることもできる。
営業税の税負担も大幅に緩和!
財政部国家税務総局より、個人所有の住宅転売にかかる営業税の税負担が大幅に緩和されたと発表されている。これまでは購入してから5年が経由するまでは営業税が課税されていたが、普通住宅(建築面積90㎡未満)であれば2年が経過していれば免除されるようになっている。
中国では住宅市況の変化にともない、これまで何度も「5年」と「2年」の営業税免除期間の調整を行ってきている。2006年5月には5年経過と決められていたが、リーマンショックに始まる世界金融危機にともない2008年12月には5年から2年に変更されていた。中国の不動産市況が過熱してきた2011年には再び2年から5年に調整され、今回、再び2年に変更された。
3.中国の住宅価格データ
国家統計局のデータを読む
中国の住宅価格相場を考えるときは、国家統計局が毎月公表している「70都市の住宅販売価格変動の状況」という統計データがわかりやすい。中国や日本の大手メディアもこの統計データに注目している。北京、上海、広州、深センなどの一線都市をはじめ、70の主要な中国の都市の住宅販売価格の動きを新築、中古にわけてまとめている。前月比や前年比でマンション価格の動きを表している。
中国指数研究院のデータを読む
もうひとつは、中国指数研究院が公表している「中国不動産指数100都市価格指数報告」。この統計データは各都市の住宅価格(平均値)を数値で表しているのでわかりやすい。前月対比の増減ポイントだけではない。
- 中国指数研究院とは?
- 中国指数研究院とは、中国房地産協会と国務院発展研究センター(政府機関)などによって1994年に設立されたシンクタンク。中国の不動産や住宅に関する研究を専門的におこなっている。インターネット不動産仲介サイトの捜房網が運営する捜房研究院と2004年合併しており、捜房網と関係が深い。
たとえば、広東省の深セン市の2015年6月の新築住宅相場(平均)は1㎡あたり34,467元(約68.9万円)で前月比+6.58%上昇している。100㎡のマンションであれば、全体平均価格は345万元(約6,890万円)で販売されている。日本のほとんどの都市よりも住宅価格は高くなっている。
天津市の新築住宅相場(平均)は1㎡あたり10,613元(約21.2万円)で、100㎡のマンションであれば106万元(約2,120万円)。もちろん、天津市内の中心部であれば平均値よりも大幅に高いだろう。このように中国指数研究院の統計データは他都市と住宅相場を比較しやすいという特徴がある。(了)