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中国の大学入試、少数民族は本当に優遇されているのか?

中国では人口の90%以上を占めている漢族にくらべて、少数民族のほうが教育面で優遇を受けていると耳にすることがあるが事実なのだろうか。中国の大学入試である高考を参考に、少数民族にたいする大学入試の加点政策を理解する。

1.中国の大学入試で少数民族は優遇されている?

そもそも少数民族とは?

中国には56の民族がいる。漢族を除いた55の民族は少数民族と呼ばれている。中国の少数民族は、漢族に比べて大学に入りやすいと耳にすることがあるが、実態はどうなっているのだろうか?本当に少数民族は大学入試で優遇されているのだろうか?

中国の少数民族
漢族を除いた55の民族は、漢族に比べて人口が少ないため少数民族と呼ばれている。漢族は中国全体の90%以上の人口を占めている。55の民族の一つ壮族(チワン族)の人口は1,690万人。決して人口が小さいわけではない。あくまでも漢族に対して少数という意味で少数民族と呼ばれている。

高考で政策性加点が行われている

中国で大学に入学するにはいくつかの方法がある。その中で、最も一般的な大学入学の方法は、毎年6月に行われている高考と呼ばれる普通高等学校招生全国統一考試(以下、高考)に参加する方法だ。高考の結果によって、大学への合格が決まる仕組みである。

高考とは?
高考は毎年6月に行われている中国の大学入試。正式名称は普通高等学校招生全国統一考試という。受験科目は国語、数学、外国語、総合科目(または選択科目)の4科目が多い。地域によって配点や科目に違いがある。

その高考の結果である総合得点に、少数民族の戸籍であれば加点される仕組みがある。これは政策性加点と呼ばれている。この政策により少数民族は大学入試で優遇されていると言われている。

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中国には政策性加点だけでなく、各大学で審査する自主性加点と呼ばれる加点制度もある。自主性加点は、スポーツ推薦にあたる体育特長生(高水平運動員招生)、管楽器など芸術面ですぐれた芸術特長生などがよく知られている。

2.どのくらいの優遇になるのか?

上海市の場合

上海市の場合、少数民族の政策性加点は5点である。この5点の加点は、上海市の高考でどのくらい有利になるのだろうか?

上海市で4年制大学である大学本科(文系)を受験する場合、国語150点、数学150点、英語150点、選択科目150点(政治、歴史、地理の1科目)の4科目を受験する必要がある。満点は600点。この600点が満点の試験のなかで、5点が優遇される仕組みである。

上海市の公式の進学試験を管轄している上海市教育考試院は、政策性加点の対象者の具体的なリスト(受験番号、名前、学校名、加点項目など)を対外的に公表している。受験生に対象者を知らせるとともに、対象者を公開することで不正取得がないか社会の監視を受けている。

北京市の場合

北京市の場合、少数民族の政策性加点は上海市よりも高く、10点が加点される。海外から帰国した華僑やその子供、台湾戸籍も同様に10点が加算される。

北京市で4年制大学の大学本科(文系)を受験する場合、国語150点、数学150点、英語150点、文系総合300点の4科目を受験する必要がある。文系総合は政治、歴史などの内容を含んでいる。4科目の満点は750点。少数民族の場合、満点750点の試験で10点が優遇される。

広西チワン族自治区の場合

少数民族が多い広西チワン族自治区の場合、地域や少数民族の種類によって5点から20点が加点される。広西チワン族自治区のなかでも、発展している南寧市、柳州市、桂林市などにいる一部の少数民族は5点しか加点されない。

四川省の場合

四川省の場合、地域や少数民族の種類によって5点から35点が加点される。三州、十県という地区に戸籍がある少数民族は35点が加点される。同じ地区に戸籍がある漢族は、教育環境が都市部にくらべて良くないということで20点が加点される。しかし、少数民族の35点の加点に対しては、漢族は15点低い20点しか加点されない。

四川省の少数民族は最高35点も優遇されるので、他の省(自治区、直轄市)の受験生よりも大幅に表面的には有利に見える。しかし、中国の高考は地域別に合格枠を設定しており、あくまでも同じ省内で競争する。生活や学習環境の良い四川省内の都市部の漢族は加点がなく、四川省内の貧しい地域の少数民族はもっとも優遇される仕組みとなっている。(了)

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