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中国の固定電話の無線版「小霊通」、これはどんなもの?

中国でインターネット上の情報や記事をみていると「小霊通(シャオリントン、小灵通)」というサービス名を見ることがある。中国の「小霊通」とは一体どのようなサービスなのだろうか?現在も使われているのだろうか?

1.「小霊通」とは何か?

中国版PHSと言われる「小霊通」

中国の新聞や雑誌を読んでいたら、ときどき「小霊通(シャオリントン)」という言葉を目にする。中国で現在も使われているサービスなのだろうか?中国移動や中国電信の提供するモバイル通信と何が違うのだろうか?

(図1)中国の「小霊通」

(図1)中国の「小霊通」

「小霊通」について調べていくと、中国版のPHS(Personal Handy-phone System、簡易型携帯電話)の俗称であるとかかれている。普通のPHSというよりも、むしろ限定された地域でしか利用できないPHSといったほうが正確だ。

日本のPHSは?
日本ではイー・アクセス株式会社が、ウィルコムというブランドでPHS事業を展開している。

中国から消えた「小霊通」?

調べた結果を先にいうと、現在では「小霊通」はほぼ使われていない。なぜ「小霊通」は使われなくなったのだろうか?中国政府は「小霊通」のサービスを2011年末までに終了するように指導してきたからだ。サービス終了を求められた理由は、「小霊通」が利用していた1900-1920MHz帯の周波数帯に関係している。

(写真1)簡易式携帯電話(PHS)の「小霊通」の機器

(写真1)簡易式携帯電話(PHS)の「小霊通」の機器

中国最大の移動通信事業をおこなっている中国移動(チャイナ・モバイル)が展開するTD-SCDMAという第三世代モバイル通信技術(3G)は、「小霊通」の利用していた周波数帯の帯域に近かった。中国移動によるTD-SCDMAの展開にマイナス影響を起こさないように、「小霊通」のサービスは中国政府から終了するよう求められたのが縮小の道に入っていった経緯だ。

ただ、2014年7月26日付の瀋陽晩報(電子版)によると、中国聯通(瀋陽)は2014年8月31日に「小霊通」のサービスを終了すると報道している。地域によっては現在も利用されているのが実態のようだ。

2.固定電話ネットワークを使用する「小霊通」

1997年からスタート

中国のPHSである「小霊通」は1997年12月、浙江省杭州市で固定電話ネットワークに無線方式で接続するという試験的な位置づけではじまった。固定電話のネットワークに有線ではなく、PHSで利用される通信規格をつかって接続するのが「小霊通」だ。

中国の通信業界を主管する信息産業部(現在の工業和信息化部)は、「小霊通」を固定電話の補助的な役割と位置づけていた。「小霊通」は電磁波による健康への影響がすくないため、環境にやさしい携帯電話ともいわれた。中国の「小霊通」は、おもに北部を中国網通(現在の中国聯通)が運営し、南部21省を中国電信が運営していた。

中国電信が独占していた通信業界
もともとの中国の通信業界は、中国電信(チャイナ・テレコム)1社が独占する業界だった。1994年ごろから通信業界に対する通信業界の改革がはじまり、中国電信が独占していた固定電話ネットワークも北部は中国網通に引き継がれた。

3.「小霊通」は便利だったのか?

中国電信には必要だった「小霊通」

「小霊通」は人体にやさしく、音質もよかった。「小霊通」を運営していた中国電信や中国網通としても、モバイル通信の営業許可をもっていなかった時代は、簡易的な携帯電話として利用できる「小霊通」は必要だった。

一方で、「小霊通」の基地局でカバーできる電波の範囲はせまく、携帯電話にくらべて電波がとどく範囲が狭いといわれる。携帯電話とおおきく異なるのは、あくまでも限定されたサービス地域でしか利用できず、べつのサービス地域では利用できなかった。

サービス地域は限定

中国の携帯電話であれば、ほかの省や都市でサービスを行っているグループ会社の通信基地局を利用することができる。国内ローミングとよばれるもので、たとえば中国移動(上海)の契約者は広東省にある中国移動(広東)のサービスを利用して使用することができる。

国内ローミングとは?
国内ローミング(国内漫遊)は、契約している番号の所属地域以外で利用する場合をさす。広東省では省内の国内ローミングが無料であったり、契約地域や契約条件によって費用の発生有無がことなる。
(写真2)中国の携帯電話には携帯番号の所属する省・都市が設定されている

(写真2)中国の携帯電話には携帯番号の所属する省・都市が設定されている

(了)

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