中国の生活、ビジネスに役立つ情報を発信するサイト

日本人駐在員も対象!上海市の(中国)外国人永住居留証とは?

中国でも外国人永住制度が導入されているが、中国人国籍の配偶者でないと取得は難しかった。上海市では2015年7月より取得条件を大幅に緩和した結果、上海に駐在する日本人のなかにも対象となる人が出てきている。その具体的な条件とは?

1.上海の緩和された外国人永住居留証

外国人版の居民身分証である外国人永住居留証

2015年7月から上海市では外国人の永住居留証の取得が緩和されている。上海で生活する日本人のなかには、この永住居留証取得の対象になる人も少なくない。この外国人永住居留証は中国版グリーンカード(永住権)で、通常のパスポートに貼付される居留証よりも利用範囲は広い。永住居留証自体は独立したカードになっていて、中国人がもっている居民身分証のような存在だ。

中国では2004年8月より「外国人在中国永住居留審査管理弁法」という規定で、外国人永住居留証の制度をスタートしている。ただし、対象となる外国人のハードルが高く、なかなか外国人永住居留証が取得できないのが実態だった。そこで、2014年6月に中央組織部がもっと利用しやすいように制度を改定すると公表していたところだ。

中国共産党の組織部とは?
中国共産党の組織部は、正式には中国共産党中央委員会組織部という。中組部ともよばれる。中国共産党の人事管理や人事制度の制定、研修などを主管している重要な部門。いわゆる中国共産党の人事部の役割。過去には毛沢東も組織部長を歴任している。

2.上海に住む多くの日本人駐在は対象

上海に4年以上滞在している駐在員の多くは対象!

上海市が展開している新しい外国人永住居留証の政策は「人材工作メカニズムの改革を深化させ、イノベーション・起業を促進させる実施意見」というもの。この実施意見に具体的な内容が記載されているが、さらに詳しい実施細則が公表されることが期待されている。

この外国人永住居留証にはいくつかの申請種別がある。そのなかで、「就業人員申請永久居留証」という対象が外国人駐在員にマッチしているだろう。その申請条件は、(1)上海で4年以上勤務していて、各年6か月以上は中国にいること。(2)毎年の税引前所得が60万元(約1,200万円)を超えていること。(3)毎年の個人所得税の納税額が12万元(約240万円)を超えていること。(4)勤務先から推薦があること。

月平均所得は4万元(約80万円)がボーダーライン!

この4つの条件を見ると、税引前所得は個人所得税や社会保険料などを控除する前(つまり額面給与)のため、実際は48万元(約960万円)以上の所得があればよい(60万元-12万元=48万元)。月額に換算すると毎月4万元(約80万円)で、この所得には賞与(ボーナス)も含まれる。

この条件にマッチする日本人駐在員は相当数いるはずだ。将来的に中国と長くかかわっていく人は申請を検討してもよいだろう。詳しい内容は上海市出入境管理局のホームページの「政務公開(Government Affairs Public)」に掲載されている。

外国人永住居留証のハードルは高かった!

この緩和政策が実施されるまでは、中国人と結婚した外国人を除いては、外国人永住居留証を取得するハードルはかなり高かった。たとえば、「外商投資産業指導目録」の奨励類で50万ドル(約6,000万円)以上の投資実績が必要だったり、200万ドル(約2.4億円)以上の中国への投資が求められていた。普通のサラリーマンではとても取得できるような条件ではなかった。

3.中国の外国人永住居留証のメリットと注意点

外国人永住居留証のメリットは?

中国の外国人永住居留証の有効期限は5年間(18歳未満)または10年間(18歳以上)となっている。有効期限が到来すると、外国人永住居留証を更新することになる。いまのところ外国人永住居留証を取得すると、飛行機や列車のチケット購入時や乗車時にパスポートの代わりに利用できる。中国国内のホテル宿泊時もパスポートではなく、外国人永住居留証で問題ない。もうひとつ、香港と深センのあいだの中国側の出入境管理局(イミグレーション)で登録しておけば自動ゲート(自助通関)を利用できる。

(写真1)香港に隣接する羅湖口岸(出入境管理局)のようす(広東省深セン市)

(写真1)香港に隣接する羅湖口岸(出入境管理局)のようす(広東省深セン市)

ただし、いまのところ銀行口座の開設では外国人永住居留証が利用できず、パスポートが引き続き求められる手続きも少なくない。これから外国人永住居留証の保有者が増えてくれば、いろいろな場面で利用できる範囲が広がってくるかもしれない。

外国人永住居留証の注意点は?

くわしい内容は「外国人在中国永住居留審査管理弁法」に記載されているが、外国人居留証を取得しても一定の条件を満たさないと更新できなくなってしまう。毎年少なくとも3か月以上は中国国内にいなければならない(同法第24条)。

もちろん、特別な理由があり居留地の公安局で許可を得ていれば、その条件を満たしていなくても更新可能だ。ただし、5年間で合計して少なくとも1年以上は中国に滞在していなければならない(同法第20条)。

日本の永住制度は?
日本の永住制度は、日本で原則10年以上の居住期間が必要。日本では永住権ではなく、正確には在留カード(旧外国人登録証)の在留資格が「永住」となる。日本国内での活動に基本的に制限がなくなり、職業を自由に選択できる。日本を長期間(5年以上)はなれると基本的に永住許可は失効する。選挙権はない。

あまり増えていない中国の外国人永住者

中国の外国人永住居留証は2004年8月からスタートしているものの、あまり外国人永住居留証の取得者は増えていない。2010年は564人、2011年は656人、2012年は1,202人が外国人永住居留証を取得したと2013年9月17日付の新華網「中国に移住する外国人が少しずつ増加」で報じられている。

ただし、その申請者の53%は中国から他国に移住した華僑(外国籍を持っている中国人)が取得している。中国に滞在する外国人は2012年末時点で中国全土で63.3万人が生活しており、その数から考えると外国人永住居留証を取得している割合はきわめて少ないのが実態だ。ただ、今回の上海市の取得緩和により、以前よりも取得のハードルが低くなり、これまで外国人永住居留証の取得を断念していた人が取得しやすくなったのは間違いない。(了)

top of page