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南京市の家電量販店「ラオックス」、中国で成功するか?

日本で話題になることの多い訪日中国人観光客の「爆買い(ばくがい)」。とくに総合免税専門店のラオックス(Laox)銀座本店は、中国人買い物客による爆買いの象徴的な場所となっている。じつはラオックスは中国本土にも出店している。

1.遠く離れた南京市で展開するラオックス

ラオックス親会社の蘇寧雲商の本拠地、南京市に展開!

上海から中国高速鉄道(新幹線に相当)で約1時間15分のところに位置している南京市。南京市は江蘇省の省都(県庁所在地に相当)にあたり、江蘇省政府の行政機関が拠点を置いている。この南京市の中山北路と山西路が交差するところに、日本発祥のラオックス(Laox、楽購仕生活広場)は営業している。

ラオックスは1939年に谷口商店(東京都)としてスタートし、2000年ごろには売上高2,000億円となり、日本国内の大手家電量販店のひとつとされていた。その後、家電量販店の競争が激化したこともあり、2009年6月に中国の大手家電量販店である蘇寧雲商集団(グループ)と資本業務提携契約を締結し、その傘下となっている。

(写真1)東京都(銀座・秋葉原)のラオックスのロゴデザインと同じ(南京市)

(写真1)東京都(銀座・秋葉原)のラオックスのロゴデザインと同じ(南京市)

ラオックスの株主名簿には蘇寧雲商は出てこない!

ラオックスの表面上の大株主はGRANDA MAGIC LIMITED(所在地:イギリス領ケイマン諸島)という企業。この企業がラオックス株の多くを保有している。GRANDA MAGIC LIMITEDは香港蘇寧が100%出資している子会社のため、大株主一覧に蘇寧雲商集団は出てこないが、実質的に蘇寧雲商集団の子会社になっていることがわかる。中国企業ではよく見られる企業支配の構造だ。

その蘇寧の本社を置いているのは南京市(江蘇省)であり、傘下のラオックスも南京市に出店している。ラオックスは日系企業というより、むしろ実質的には外資企業(中国企業)に該当し、日本発祥の家電量販店が中国で展開している、というのが正確なところだろう。

ラオックス(LAOX)とは?
ラオックス(LAOX)とは、東京の秋葉原や銀座で主に中国人観光客にデジタル製品、高級時計などを販売している免税専門店。1939年に開業した谷口商店を源流に、1976年からラオックスとして営業。2009年8月に中国の家電量販店大手の蘇寧雲商集団(江蘇省・南京市)の傘下になった。中国語では「楽購仕」。中国国内にも店舗展開している。

2.ラオックス(南京市山西路店)の店内

中国国内のラオックスは何を販売しているのか?

日本にあるラオックスは現在は家電量販店ではなく、訪日中国人観光客をメインターゲットにした総合免税専門店として営業している。いっぽう、南京市にあるラオックスは、どのようなビジネスを展開しているのだろうか?中国国内で営業しているラオックスは日本と同じような免税ビジネスができないため、家電・デジタル製品を主力としたショッピングセンター(SC)を運営している。

中国にあるラオックスは家電量販店のようにスマートフォン、デジタルカメラ、大型家電(テレビ、冷蔵庫、洗濯機ほか)を販売しているだけでなく、フロアによっては雑貨・日用品、時計を販売している。最上階には飲食店のフロアも設けている。まさに、日本のヨドバシカメラのようなビジネスモデルを中国国内では展開している。

(写真2)ラオックス(南京市山西路店)のデジタル製品販売フロアの様子

(写真2)ラオックス(南京市山西路店)のデジタル製品販売フロアの様子

江蘇省の南京市
南京市は、江蘇省の省都(県庁所在地に相当)。上海市から高速鉄道で約1時間15分の内陸部に位置する。南京市の総人口は821万人(2014年末)で、同じ江蘇省の蘇州市(1,060万人)よりも少ない。南京市には中山陵や夫子廟など観光スポットも多い。

中国式の仕組み!メーカー別のテナント募集ビジネス!

ラオックス店内の大型家電フロアをのぞいてみると、中国でよく見かけるメーカー別の販売方式を採用している。日本人消費者としては日本の家電量販店のように同じ場所に同種類の製品を置いてほしい。残念ながら中国の商習慣はすぐに変えることはできないのだろう。このメーカー別の販売方式の最大の弱点は、気軽に商品を見ることができない点だ。

中国ではメーカーから派遣された販売スタッフがすぐに寄ってきて、ゆっくりと展示されている製品を見ることができない。ラオックスなどの家電量販店側としては、在庫リスクを持たずにメーカーに場所(テナントスペース)を貸出すため、経営リスクは低いかもしれない。

しかし、すぐに店舗スタッフに声をかけられと落ち着いて製品を見ることができないし、まして購入予定のない新製品を気軽に見れる雰囲気はない。日本の家電量販店のように見込み客が心ゆくまで製品を見れる環境づくりが必要かもしれない。

(写真3)大型家電の販売フロア、メーカー別テナント(南京市のラオックス内)

(写真3)大型家電の販売フロア、メーカー別テナント(南京市のラオックス内)

3.ラオックス中国のビジネスモデル!

家電・デジタル製品だけでない!雑貨から日用品まで!

中国の家電量販店のなかではラオックスのビジネスモデルはめずらしい。中国では家電・デジタル製品のみ販売している家電量販店が一般的だ。いっぽう、中国のラオックス(南京市山西路店)では、おもちゃ(玩具)、日用品、日本からの輸入商品を販売するフロアを設けていて、家電以外の見込み客も取り込める日本式のビジネスモデルを導入している。

同じ建物の5階部分には飲食店フロアが設置されている。まさに、日本のヨドバシカメラのビジネスモデルを持ち込んでいると言えるかもしれない。見込み客であっても家電・デジタル製品を毎日購入するわけではないので、まずは日常的にラオックスを訪れてもらうために多くの飲食店を誘致している。

(写真4)おもちゃ(玩具)や日用品も販売するラオックス(南京市山西路店)

(写真4)おもちゃ(玩具)や日用品も販売するラオックス(南京市山西路店)

5階にある大人気の飲食フロア、人気チェーン店も多数出店!

ラオックスの家電・デジタル製品の販売フロアには顧客はそれほど多くない一方で、5階の飲食フロアにはたくさんの顧客であふれている。中国で人気の飲食チェーン店を誘致しているだけでなく、ラオックスの店内(建物内)が清潔に保たれていることも飲食店利用者の来店にプラスに作用しているだろう。

(写真5)ラオックス5階の飲食フロア、たくさんの顧客であふれている

(写真5)ラオックス5階の飲食フロア、たくさんの顧客であふれている

これからの時代、家電販売専門店では集客できない!?

いまの中国では家電量販店だけでは生き残れない。中国の家電量販店は厳しい競争にさらされている。消費者は実店舗で冷蔵庫やテレビを確認すると、阿里巴巴(アリババ)集団の運営する天猫(Tmall)や家電・デジタル製品に強い京東商城(JD.com)などのネット通販で価格を比較して購入する人が増えているからだ。

ネット通販大手の京東商城とは?
京東商城は中国最大手の自社販売型のネット通販サイトを展開している。2013年の売上高は693億元(約1兆1,400億円)。創業者の劉強東(リュウ・チャンドン)が1998年に設立。2014年5月にベンチャー向け株式市場である米ナスダックに上場。

家電やデジタル製品は結局、どこで購入しても製品自体の品質は変わらない。中国の消費者は送料無料で価格がもっとも安い家電・デジタル製品をネット通販で購入する方法を覚えてしまった。ネット通販サイトのあいだでも激しい競争が繰り広げられている。インターネット上のユーザー評価を上げるために、赤字覚悟で販売するネットショップも存在する。その結果、中国のネット通販では実店舗よりも安く買える機会が増え、顧客が家電量販店から離れてしまった。

ラオックスは中国で生き残れるのか?少なくとも日本のヨドバシカメラやビックカメラのような日常的にユーザーが来店する店舗づくりが必要だろう。南京市のラオックスを見たところ、幸い、ほかの家電量販店よりも半歩は先行している印象がある。これからの中国での成長に期待したい。(了)

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