常州市の万都広場、ショッピングセンターの7割が空きテナント!?
常州市(江蘇省)にある立派なショッピングセンターに立ち寄ったところ、空きテナントだらけの寂しい状態だった。中国の中規模以上の都市では百貨店やショッピングセンターが多すぎて、顧客と入居テナントの取り合いの状況が続いている。
1.常州市の巨大ショッピングセンター
万達広場、万科広場ではない!地元の万都広場
江蘇省の常州市に万都広場(WANDU PLAZA)という巨大ショッピングセンターが現れた。2015年5月にプレオープンされた万都広場は、入居しているお店よりも空きテナントのほうが多いきびしい状況だ。最初にこのショッピングセンターを見たとき、あまりの立派な外観に、中国の大手不動産会社が展開している万達広場、万科広場ではないかと勘違いしてしまった。
この万都広場を展開しているのは、常州市の地元企業である中国万都集団。1993年に創業した中国万都集団の前身企業が成長し、その企業が15億元(約300億円)の巨額の投資をおこなって建設したのがショッピングセンターの万都広場だ。中国の地方都市では、地元企業がその街の地方政府のサポートをうけて、ショッピングセンターやホテルなどの大規模投資をするケースが見られる。地元政府としても、すぐに経済成長の数値に寄与する不動産投資を企業に求めてしまう傾向がある。
- 江蘇省の常州市とは?
- 常州市は、上海市から高速鉄道で約1時間のところにある江蘇省の都市。常州市の総人口は470万人(2014年末)。多くの日系企業が進出し、日本料理店も多い。市内中心部には常州を代表する観光名所の天寧寺があり、13重の塔(天寧宝塔)が有名だ。
2.万都広場のなかの様子
300億円が投入された巨大ショッピングセンター
中国の地方都市と言っても、百貨店やショッピングセンターの外観や内装は、北京、上海などの巨大都市にあるものと大きな違いはない。大都市の百貨店にくらべると、入居しているテナントは初めて耳にするブランドも少なくない。常州市の万都広場(WANDU PLAZA)は約300億円も投入されており、ショッピングセンターの外観や設備は一流と言っても過言ではない。
ただし、「お客さんがほとんどいない」という致命的な問題をかかえている。ここまでテナントが入らない状況から、いったいどのように挽回していくのだろうか?
2015年5月オープン、7割が未だ空きテナント!
万都広場のなかに入ると、営業している店舗のほうが少ないという状況。中国では地方の中級都市も含めて、明らかにショッピングセンターが過剰になっている。立地の選択やテナント誘致に失敗したショッピングセンターは、十分な集客ができず赤字のお店も少なくない。
万都広場も苦戦している地方都市のショッピングセンターのひとつ。オープンから5か月が経過しても、7割ほどのテナントスペースは空き状況のままになっている。
歓迎され、苦戦するショッピングセンターの実情!
中国の地方政府はGDPに大きく貢献してくれるショッピングセンターや百貨店の新設などの大型投資を歓迎するものの、オープンしても空きテナントばかりのショッピングセンターは少なくない。常州市の市内中心部にはすでに8~9か所の大型ショッピングセンターや百貨店がある。よほど万都広場に画期的な仕掛けがないと、テナントや顧客の集客は難しいだろう。
中国ではネット通販が急成長しており、2015年1月~9月累計のネット通販の小売り販売額は、前年同期比で36.2%増加。社会消費小売総額と言われる小売り販売総額の約10%はネット通販で行われている。この社会の変化に対して、ショッピングセンターなどの実店舗は、お得感のあるネット通販に価格面で勝てず苦戦しているのが現状だ。さらに、同じようなショッピングセンターの過剰が事態を悪化させている。
売りに出るテナントスペースも!?
インターネットをみると、万都広場(WANDU PLAZA)の空きテナントスペースは売り出されている。なかなか賃貸での入居者(テナント)が集まらないため、投資対象として切り売りがはじまっている。ショッピングセンター内(1階~4階)であれば、10~15㎡の店舗スペースは30万元(約600万円)の販売価格だ。1㎡あたり2万元(約30万円)程度と常州市内の住宅用マンションより割高だ。
3.人気のショッピングセンターの外店舗スペース
飲食店はショッピングセンターの外側に出店!
万都広場の建物の内側と異なり、外側にある商業スペースは飲食店で埋まっている。わざわざ巨大なショッピングセンターに入る必要はない場合、気軽に入れる外側の飲食店であれば消費者も利用しやすいようだ。
たしかに巨大なショッピングセンターのなかに入り、4階の飲食フロアまでいくのは大変だ。外側の店舗スペースも販売されていて、280万元~700万元(約5,600万円~1億4,000万円)とショッピングセンター内よりも大幅に高い価格になっている。
周辺住民が利用する駐車場、満車状態!
不思議なことに、万都広場の前にある駐車場は満車状態だ。ショッピングセンターの利用者が使うのではなく、周辺住民に無料で開放されている。
中国ではショッピングセンターの過剰感が明らかだ。大型のショッピングセンターの建設は短期的に経済成長にプラスになるものの、赤字が続くようであれば閉鎖されることになり、将来的には経済のマイナス要素になりかねない。
ネット通販大手はシェア増加を狙って格安販売を続けている。家電・デジタル製品のネット通販に強い京東集団の2015年第3四半期は純損失5.3億元(約100億円)の赤字で、2014年5月に株式上場してから6四半期連続の赤字だ。実店舗、ネット通販ともに激しい消耗戦は今後も続きそうだ。(了)