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中国の住宅積立金を理解する、どのように利用できる?

中国には住宅積立金制度があります。この制度は日本の勤労者財産形成貯蓄制度(財形貯蓄制度)に類似していて、貯蓄と住宅ローン融資の両方の機能をもっています。中国でも条件に応じて、低金利の住宅ローンをうけることができます。

1.中国の住宅積立金制度

そもそも住宅積立金とは?

中国には住宅積立金という制度があります。政府機関(公務員)、国有企業、民間企業、外商投資企業(外資企業)などの従業員は住宅積立金制度に加入しています。この住宅積立金制度の基本となる法律は、「住宅公積金管理条例」(2002年施行)です。

この住宅積立金制度は、都市住民の住まいの改善を進めるために制度化されたものです(条例の第1条)。国務院(内閣に相当)や中国人民銀行による経済政策に大きく左右される仕組みになっています(条例の第6条、第7条)。

中国の各地には住宅積立金管理委員会という組織があり、この委員会が実務的な運営の方向性を担っています。この管理委員会は、政府部門、従業員代表、企業代表の3つの組織から構成されています。具体的な実務運営は、住宅積立金管理センターという機関が事務作業を行っています。

企業と従業員個人から徴収する

この住宅積立金制度は、社会保険と同じように必ず加入しなければならないものです。具体的な住宅積立金制度の運用は、各省(自治区、直轄市)やその下部の行政政府(地級市レベル)に任せられています。

毎月の徴収金額は、前年の平均賃金に一定比率を勘案した金額です。上海市では企業7%、従業員個人7%のあわせて14%相当の金額が徴収されています。この徴収された住宅積立金は、企業が拠出した部分も含めて、すべて従業員個人のものになります。

上海市では7%の比率ですが、条例の第18条には企業と従業員個人ともに5%の比率を下回ってはいけないと決められています。企業と従業員個人の拠出比率をそれぞれ5%に設定している地域も少なくないでしょうが、5%を下回る場合は法律違反になります。

どのような時に利用できる?

この住宅積立金は、新築住宅や中古住宅の購入だけでなく、大規模な住宅のリフォーム費用にも使うことができます。このような住宅に対する引出しだけでなく、定年退職や海外への移住のときにも住宅積立金を引き出すことが可能です。

2.住宅積立金制度の住宅ローン

どのような人が利用できる?

中国の住宅積立金制度は貯蓄機能だけではありません。日本の住宅金融支援機構(以前は住宅金融公庫)の財形住宅融資と同じように、住宅積立金の残高などに応じて低金利の住宅ローンをうけることができます。

日本の財形住宅融資では財形貯蓄の残高に応じて、最高10倍まで住宅取得やリフォーム(リノベーション)の資金を借りることができます。

では、具体的に住宅積立金制度を活用した住宅ローンは、どのような人が利用することができるのでしょうか?

  1. 住宅積立金管理センターの基準を満たした住宅積立金加入者。
  2. 一年以上の間、住宅積立金を支払っている者。
  3. 安定した収入、良好な信用、返済能力を有している者。
  4. 住宅購入契約を締結し、すでに頭金を支払っている者。
  5. 金融機関が同意する資産(購入する住宅など)を抵当に入れている者。
  6. 抵当に入れている資産(購入する住宅など)に損害保険をかけている者。
  7. 今後も住宅積立金を支払う意思がある者。

民間の金融機関よりも金利が低い

なぜ中国人は住宅積立金による住宅ローンを利用するのでしょうか?理由は民間金融機関(商業銀行)の住宅ローンよりも、だいたい2%くらい金利が低いからです。商業銀行の住宅ローンが6%(年率)とすると、住宅積立金貸付は4%くらいに設定されています。

中国人民銀行の金融政策により基準貸付金利が変動すると、商業銀行と住宅積立金貸付ともに調整される仕組みになっています。

住宅積立金貸付を受ける人は、住宅積立金管理センターから直接ローン金額を借りるわけではなく、住宅積立金管理センターの認可を得て、指定された商業銀行から住宅積立金ローンを借りる仕組みになっています。(了)

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