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中国株の信用取引、公式データでわかりやすく理解できる!

中国の経済統計に不信感をもっている人も少なくないが、中国株式市場の信用取引データは毎日公表されている。国有企業の中国証券金融株式会社が公表しているそのデータを見ると、中国株の信用取引の規模や動向を理解することができる。

1.中国株の信用取引データ

中国のA株、2014年11月から外国人でも取引可能!

ここ最近、日本の報道機関が中国株について報じているものの、日本人にとっては中国株はとにかく分かりにくい。その理由のひとつは、中国に2つある上海と深センの証券取引所で直接取引している日本人はほとんどおらず、中国株について発信する人がそれほど多くないからだ。2014年11月から香港の証券取引所を通じて、外国人でも人民元建てのA株(上海のみ)を購入できるようになっているが、なかなか現地の事情が分かりにくいと手を出しにくい株式に変わりはない。

(写真1)証券会社の株価ボードを眺める投資家たち(上海市内)

(写真1)証券会社の株価ボードを眺める投資家たち(上海市内)

日本の内藤証券、東洋証券、アイザワ証券などで中国株の売買ができるものの、実際に日本の個人投資家で取引している人はそれほど多くないだろう。中国は2015年のうちに香港・深セン間の相互株式取引のスタートを目指しており、近い将来、深セン証券取引所のA株も外国人投資家は売買できるかもしれない。少しずつだが日本人にとって、中国株が身近な存在に変化しているのは間違いないだろう。

中国株のA株とB株
中国の株式市場には、人民元建てのA株と外貨建てのB株の2つが存在する。2014年11月まで一部の例外を除いて、海外投資家は外貨建てのB株しか取引できなかった。中国B株は上海証券取引所に上場しているものは米ドル建て、深セン証券取引所に上場しているものは香港ドル建てで取引されている。

中国で活発な信用取引!

中国株でも日本と同じように資金や株式(貸株)を借りて取引する信用取引が行われている。じつは中国の信用取引データは、中国証券金融株式会社(通称:証金公司)から詳しい統計データが毎日公表されている。

たとえば、2015年7月9日(木)の信用取引額は1,187億元(約2.4兆円)。そのうち、信用買いは1,172億元(約2.3兆円)、信用売りはたった15億元(約300億円)しかない。中国A株(上海、深セン)の全体取引のうち、これらの信用取引は12.5%を占めている。かなり高い取引比率だ。2015年7月9日時点での中国A株の信用取引残高は1兆4,385億元(約28.7兆円)で、中国A株全体(流通株)の約3.61%を占めている。ニューヨーク証券取引所や東証一部よりも信用取引比率は高い。

2.信用取引を支える証金公司

中国の信用売(カラ売り)規模は小さい!

ここ最近の中国株の暴落は信用売(カラ売り)が要因なのだろうか?証金公司が公表している信用取引データ(2015年6月末)によると、信用取引残高の合計残高2兆491億元(約40.9兆円)のうち、信用買は2兆444億元(約40.9兆円)、信用売はたった47億元(約940億円)しかない。2012年1月~2015年5月までの月別データをみても、信用買にくらべると信用売(空売り)はそれほど大きな規模でないことがわかる。

中国株式市場(上海・深セン)の信用取引残高

証金公司は証券会社から信用取引のデータを毎日収集する仕組みを築いている。現在、中国で信用取引ができる証券会社は合計92社。2015年7月9日時点の中国A株市場(上海、深セン合計)の時価総額(流通株)は38.7兆元(約774兆円)で、信用売の比率は0.1%にも満たない。

正規の信用売が中国株の暴落をまねいたと考えにくい

当局の許認可の多い中国の金融業界で、証券会社がリスクを冒してこっそり信用売を行っている可能性はきわめて低い。今回の中国株の暴落は信用売(空売り)によって大混乱が発生したとは言えないだろう。

ただし、中国にも仕組みファンド(ストラクチャードファンド)と呼ばれる複雑なデリバティブ金融商品があり、この統計にあらわれないレバレッジのある金融取引も少なからず存在することを留意しておいたほうがいいだろう。中国の大手国有銀行で定期預金よりも金利が高く、元本保証付きの理財商品(投資金融商品)などは、信託商品として仕組みファンドの一部に組み込まれていることも少なくない。

(写真2)元本保証で4.25%以上の理財商品、中国ではよく見かける

(写真2)元本保証で4.25%以上の理財商品、中国ではよく見かける

信用取引を支える中国証券金融会社とは?

この証金公司とは一体どのような会社なのだろうか?上海証券取引所、深セン証券取引所などにより2011年10月に設立された証券金融という会社で、証券会社に対する融資(信用買)や貸株(信用売)のサポートをしている会社だ。民間企業ではなく国策会社(国有会社)。

日本の株式市場にも信用取引を支える証券金融会社が2つある。日本証券金融株式会社(日証金)と中部証券金融株式会社。中国の証金公司はこれらの日本の証券金融会社と同様に、中国の証券会社が行う正規の信用取引を支えている。

中国の証券会社による信用取引
中国の証券会社による信用取引は、2010年3月31日から正式にスタート。中国証券金融株式会社(通称:証金公司)が日次・月次ベースで信用取統計を公表。2015年7月9日時点で信用取引残高は1.4兆元(約28兆円)で、中国A株(上海、深セン)の流通時価総額の3.61%を占めている。場外配資(外部信用取引)の残高は含まれていない。

3.中国の信用取引のルール

日本と変わらない信用取引

じつは中国の証券会社がおこなう信用取引は日本とほとんど変わらない。信用取引のレバレッジ比率は保証金(担保)に対して最大3倍まで(日本は最大3.3倍)。信用取引を行うときの保証金(担保)に対して、損失が70%に達すると追加保証金(追証、おいしょう)を差し入れるよう求められる。決められた期限までに追証を入れれなければ、強制的に反対売買が行われてしまう。

信用取引の保証金(担保)として株式証券を差し入れる場合は、株価(時価)の70%として保証金額が計算される仕組み。

隠れた信用取引「場外配資」とは?

これまで述べてきた信用取引はあくまでも「正規」の信用取引。中国には証券会社を通さずに、民間融資会社の場外配資(外部信用取引)という仕組みがある。証券会社がおこなう信用取引は、(1)株式取引の経験が半年以上あること(2)保証金(担保)となる証券や現金が50万元(約1,000万円)以上あること、と一般投資家にとっては高い取引開始のハードルになっている。

いっぽう、株取引専門の融資会社である民間融資会社(配資会社と呼ばれる)は、株式を担保に融資を行っている。これらの信用取引は恒生HOMSという専用システムで証券会社につなぎ、民間融資会社名義で取引が行われ、一定の株価下落にともなう損失が発生すると強制的に反対売買される仕組みだ。これまでグレーな存在だった場外配資(外部信用取引)は、2015年7月12日に違法行為と判断されてしまった。

中国証券監督管理委員会(中国証監会)が2015年7月12日に発表した「違法な証券業務活動の従事を整理整頓することの意見」により、証券口座の実名制が守られていないという理由により、場外配資(外部信用取引)の新規口座は開設できなくなった。場外配資をおこなっていた民間融資会社の多くは、新規口座開設だけでなく、すでに開設されている口座も追加で保証金を入れることができなくなっている。(了)

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