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中国株の2つの信用取引、日本にない場外配資(外部信用)とは?

2014年9月ごろから上昇してきた中国株。2015年6月に入ってから大幅な下落を記録しており、中国の投資家のあいだでは心理的な不安が広がっている。その状況をより深刻にさせているのは、場外配資という融資をつかった株式取引の拡大だ。

1.過熱する中国の株取引

株取引に熱中する中国人、増加する信用取引

上海でバスや地下鉄に乗っていると、40代くらいの普通の女性がスマートフォン(スマホ)で株価の状況を確認している。最近の中国ではこのような光景をみることは少なくない。中国の証券会社や株式総合情報を提供している株価情報(ローソク足、株価一覧)はアプリの画面背景が黒色のため、一目で株価のチェックをしているとわかってしまう。

2015年5月21日付の日本経済新聞(電子版)「中国株の信用取引膨張 残高38兆円、1年で5倍」によると、2015年5月19日時点の中国株式市場(上海、深セン)の信用取引残高は1.97億元(約38.7兆円)となり、前年同時期から5倍に急増していると報じている。

中国には上海証券取引所と深セン証券取引所の2つの取引所があり、2015年6月25日時点の両取引所の時価総額を合計すると62.4兆元(約1,248兆円)となり、東証一部の605兆円の2倍の規模まで拡大している。中国株の時価総額に占める信用取引残高の割合は3%を超えており、ニューヨーク証券取引所や東証よりも信用取引の割合が高いと指摘されている。

さらに増加する信用取引残高!

この中国株の信用取引の残高は、2015年7月1日付の上海現地紙の東方早報(A8面)によると、6月19日時点で2.27兆元(約45.4兆円)、6月29日時点では少し残高は減少したものの2.09兆元(約41.8兆元)と報じられている。中国株の個人投資家の割合は全体の6割~8割と言われており、個人投資家が積極的に株取引に熱中しているのが信用取引の残高から見えてくる。

2.中国株の信用取引

日本にはない場外配資(外部信用取引)!

中国の信用取引は日本と仕組みが異なることに注意が必要だ。日本人が理解している株取引の信用取引といえば、証券会社に信用取引口座を開設して現物株や現金の委託保証金(担保)の最大3.3倍まで取引できるという仕組み。

いっぽう、中国では日本と同じ証券会社が提供する信用取引もあるが、もうひとつ場外配資(外部信用取引)というものがある。ちなみに、中国語で信用取引は融資融券(通称は両融)と言われている。この場外配資(外部信用取引)とは、融資会社から株式を担保に顧客(個人)が資金融資をうけて数倍のレバレッジをかけて行う信用取引である。ポイントは融資会社が証券会社ではないという点だ。この融資会社は中国語で配資公司と言われる。

株価が下落すると強制的に損切りされる!

顧客(個人)は融資会社名義の専用口座を証券会社に開設し、その専用口座で取引を行う。その専用口座は専用システムで管理されていて、株価下落により一定の損失が発生すると強制的に損切り(中国語で平倉)されるようになっている。この強制的な損切りは融資会社のルールによって違いはあるものの、委託保証金に対して損失額の割合が70%~80%に達すると実行されることが多い。

(写真1)あふれる融資会社、2000元から株取引の融資、1か月の利息1.2%

(写真1)あふれる融資会社、2000元から株取引の融資、1か月の利息1.2%

3.場外配資(外部信用取引)の仕組み

融資会社がコントロールする信用取引口座

この信用取引の専用口座は融資会社名義で開設され、専用システムで損益管理される仕組みになっている。このような仕組みで融資している融資会社は中国全土に1万社ほどいるという。中国の証券取引監督管理委員会(中国証監会)が2015年6月30日に公表したデータによると、融資会社が利用している専用システム3大手はHOMSシステム(利用額の規模:約5,000億元)、銘創システム(同:360億元)、同花順システム(同:約60億元)とされる。

これらの専用システムは証券会社のシステムに接続され、融資会社の信用取引のサービスを支えている。ちなみに、これらの融資会社は信用取引の利息として、貸出金額にたいして1か月あたり1.0~2.0%前後の利息を徴収している。年利に換算すると20%以上のところもある。融資会社は委託保証金(担保)の70%~80%まで株式の含み損が拡大すると強制的に損切りするため、貸し出した元金と利息を取り損ねることはないというわけだ。

具体的な仕組みは?

たとえば、10万元(約200万円)の委託保証金をもっている個人投資家が4倍のレバレッジで取引する場合、融資会社から40万元(約800万円)を借りて株取引をすることになる。10万元に40万元を加えた合計50万元(約1,000万円)の取引が可能になる。

この50万元を使って購入した株式が暴落し、マイナス14%の43万元まで下落すると融資会社の専用システムで強制的に損切りされることになる。なぜなら、委託保証金10万元に対して、マイナス7万元となり70%の保証金比率を下回ってしまったからだ。融資会社は時価43万元の株式を売却したお金があり、そこから融資した40万元と利息分を控除した残りを個人投資家に返金する。このような仕組みのため、融資会社が損をすることはない。

なぜ証券会社の信用取引を利用しないのか?

さきに結論をいうと、中国で証券会社の信用取引をするためには最低50万元(約1,000万円)以上の証券資産が必要になる。そのため、普通の個人投資家がレバレッジがかかる信用取引をするためには、場外配資(外部信用取引)を行っている融資会社の仕組みを活用しなければならない。(了)

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