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中国の農村にある住宅、複雑な建物と土地の仕組み!

中国の建物や土地は日本人にとっては分かりにくいものです。これを複雑にしているのは、都市部と農村部の違いにより土地の法律的な位置づけが異なるところです。中国の農村部にある住宅の法律的な位置づけはどうなっているのでしょうか?

1.中国の農村の土地

中国の土地の種類、都市と農村で権利が異なる!?

中国の土地制度は日本人にとって分かりにくいものになっています。まず、中国では都市部と農村部で土地の法律上の位置づけはまったく異なることに注意が必要です。中国の土地制度については、1989年から施行されている「土地管理法」(2004年改正)が基本的な法律になります。この「土地管理法」の第2章(第8条~16条)に詳しく土地の所有権と使用権について明記されています。

覚えておく必要があるのは、都市部の土地は国家が所有権を持っていることです(第8条)。いっぽう、農村と都市郊外にある土地の所有権は、農民集団所有(中国語では農民集体所有)とされています(第9条)。つまり、その土地にある村の委員会(地方政府)が土地所有権を持っています。その村の農民自身は土地の所有権を持つことはできません。

2.中国の住宅、所有権と使用権の違い

日本と中国の住宅(建物、土地)の違いは?

中国の都市部では日本と同じように分譲マンションを購入することが可能です。この購入した分譲マンションは商品房と呼ばれています。日本と中国で大きく異なる点は、日本では建物と土地の両方を購入できますが、中国では建物と土地使用権(居住用:70年間)を購入することになります。

中国の都市部の土地は、あくまでも「土地管理法」第8条に明記されているとおり、国家が所有権を持っています。ただし、中国でも購入した建物は購入者の所有物であることは「物権法」で明記されています。

中国の物権法とは?
中国の物権法は、不動産などのモノの所有権を定めた法律。2007年10月より施行。不動産登記、抵当権などの担保について定めた法律。担保法(1995年10月施行)と一致しない内容は物権法に従うことになっている(物権法の第176条)。

農村の住民は住宅を建てることが可能!?

中国の農村に住んでいる農民は、どのような住宅に住んでいるのでしょうか?中国の農村では「宅基地」と呼ばれる居住用の土地に居住用の建物を建設することが認められています。これは「土地管理法」の第62条に明記されていて、1世帯の農家でひとつだけ「宅基地」を利用することが可能です。

中国の農村では、この「宅基地」に住居(建物)を建築します。この住居(建物)自体は農民の所有物になりますが、「宅基地」はあくまでも村委員会(行政機関)から借りていて、その所有権は村委員会のものに変更はありません。ちなみに、この農民集団所有の「宅基地」に建てられた住宅は「小産権房」とよばれています。

小産権房とは?
小産権房とは、農民集団所有の土地に建てられた居住用の建物。これらは土地譲渡金が支払われていない。この産権証(不動産登記証に相当)は、国家の行政機関が発行するのではなく、農村の関連部門が発行している。小産権房は法律的な用語ではなく一般的な通称。

3.違法な農村の住宅売買が横行!?

農村の住宅は賃貸可能、売却は条件つき!

じつは、この農村の「宅基地」に上に建設された住居(建物)は売却することも、賃貸に出すことも可能です。ただし、その住居(建物)を売却する場合は、同じ村委員会に属する農民にしか売却できません。ほかの村の農民や都市戸籍の住民に売却できないことになっています。これは1999年に国務院(内閣に相当)に制定された「土地転売の管理を強化し、土地の投機取引を禁止する通知」の第2条2項に明記されています。

この1999年に制定された通達では農村の「宅基地」の投機取引の抑制に効果がなかったようで、2007年に国務院から新たに「農村集団建設用地に関する法律や政策を厳格に執行する通知」の第2条3項にも繰り返し違法建築と売却の制限について明記されています。当時、不動産開発業者による農村の「宅基地」に違法な建物や住居の建設が横行していたようです。

大都市のなかにもある農村の住宅「小産権房」

日本人のイメージからすると、中国の農村と言えば地方都市の田舎にしかないと思い込んでしまいます。じつは北京市、上海市、広州市などの一線都市とよばれる大都市にも農村はあります。広東省の省都である広州市には市内中心部にも農村があります。これらの農村は都会のなかの農村を言われ、「城中村」と呼ばれています。

一線都市とは?
一線都市とは、中国のなかで不動産価格や所得水準などの生活レベルや物価の高い大都市のことを言います。明確な定義はありません。中国語では「一線城市」 と書きます。「第一財経週刊」という雑誌は2014年、19都市を指定しています。北京、上海、広州、深センなどは一線都市の代表。

中国はすごい早さで経済発展が進み、昔は農村だったところが「気がついたら大都会の真ん中になっていた」というケースは少なくありません。都会のなかの農村である「城中村」は都市計画のなかで政府機関によって土地が収用されてきましたが、いまでも収用されずに残っているところもあります。

なかには賃貸マンションとして相場よりも低めの家賃で貸し出している「小産権房」もあります。これらの「小産権房」は農民房とも呼ばれています。さすがに日本人のなかで古い農民房に住んでいる人はいないと思いますが、北京、上海、広州などの古い住宅が集まっているところは「城中村」という農村の住宅街かもしれません。(了)

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