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中国の不動産紹介サイト「捜房網(Fang.com)」の失敗

中国で有名な不動産物件情報サイトの捜房網(Fang.com)や安居客。上海の不動産仲介業界では、これらの情報サイトのサービスをめぐってモメています。そもそも、中国の不動産物件情報サイトとはどのような仕組みなのでしょうか。

1.上海の不動産仲介会社が捜房網(Fang.com)に反対

強引な手数料の引き上げに不動産仲介会社が反対

上海市にある中原地産、センチュリー21(21世紀不動産)などの13社の不動産仲介会社は2014年8月、中国の不動産賃貸の物件を紹介する大手サイトの捜房網(Fang.com)というウェブサイトから物件情報を削除しました。

この結果、7月末まで105万件あった捜房網の上海市内の物件情報は一気に60万件まで激減しました。上海市内の中国ローカルの不動産仲介会社がこのような行動に出た背景には、これまでの捜房網の強引な手数料の仕組みに不満をもっていたようです。

捜房網の強引な方法とは、より多くのお金を出した仲介会社の物件を捜房網のウェブサイトのなかで検索で優先的に上位に表示させるという仕組みです。じつは同じ理由で2014年3月、上海市内の不動産仲介会社は安居客という不動産紹介サイトからも物件情報を削除していました。

2.捜房網(Fang.com)のビジネスモデル

具体的な手数料引き上げの仕組みは?

不動産仲介会社は、自社が仲介する売却物件や賃貸物件を捜房網に掲載しています。もともと、捜房網は月額60元セット(約990円)と月額120元セット(約1,980円)というサービスを提供していました。この月額60元セットとは、物件情報を一日のあいだで最高60回まで自動で更新するという仕組みです。

物件情報を更新すると、賃貸物件などを探しているユーザーが捜房網のウェブサイトで検索したときに、その物件は上位に表示されます。中国の不動産紹介サイトは、ユーザーがウェブページを訪問したときに表示される標準設定では、更新日ベースに物件の検索結果が表示される仕組みになっているからです。

捜房網(Fang.com)の更なる付加サービスで混乱

不動産仲介会社は当初、この自動更新というサービス自体を問題にしていませんでしたが、捜房網が2014年5月に一日に最高600回まで自動更新される月額600元セット(約1万円)を打ち出したことで不動産仲介会社の不満が爆発したといわれています。

不動産仲介会社が月額600元セットに反対するのはなぜか?捜房網が月額600元セットを打ち出すことで、競争がさらに激しくなったという単純な理由ではありません。もともと、不動産仲介会社の各店舗は一日に60回も自動更新するような十分な物件数を確保できていませんでした。

しかし、最高60回の自動更新ができるため、架空物件や契約済みの物件を不動産紹介サイトに掲載することが一般的になっていました。そのような中で、さらに一日に600回も自動更新されるセットプランが打ち出されても、意味のない競争で費用負担が重くなるだけと仲介会社は考えたようです。

不動産紹介サイトを利用するユーザーにとっても、実際は存在しない物件情報ばかりになり、必要な情報が見つからない状態になっていました。中国の不動産紹介サイトを利用して「掲載されている賃貸物件がすでに借りられていましました」と言われたことがある方は、この背景をようやく納得できることでしょう。

日本人としては、すでに契約された賃貸マンションは紹介サイトから削除しておくべきと考えると思いますが、上記のような理由があったのです。(了)

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