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日本にはない中国の学校制度、借読生と択校生の仕組み

中国人が「お金で子どもの入学の問題を解決した」という話を耳にしたことはないだろうか?中国の教育制度は戸籍が関係している。この戸籍制度により、中国人は子どもの教育に悩みながら生活している。戸籍と教育制度の関係とは何か?

1.中国の戸籍と教育制度

中国の戸籍と教育制度の関係

中国の学校には借読生(ジエドゥション)と呼ばれる仕組みがある。この借読生という中国語を日本語に訳すと「勉強場所を借りている生徒」となる。この借読生とは一体どのような仕組みなのだろうか?

中国人には戸籍がある。中国は戸籍によって本人の生年月日、性別、民族、親子関係など基本情報が記録されている。一部には黒戸籍(黒戸口、ヘイフーコウ)と呼ばれる戸籍のない人もいるが、基本的に行政機関に登録されている戸籍がある。中国では戸籍が所属している地区で、基本的に義務教育である小学校と初級中学(初中)と義務教育ではない高級中学(高中)の教育を受けなければならない。

中国では戸籍を自由に移動できない

よく知られていることだが、中国では戸籍を自由に移動させることができない。日本では戸籍がある場所(本籍地)ではなく、住民票がある地区で教育を受けることができる。中国にも居住証や臨時居住証という日本の住民票に相当するものはあるが、基本的には戸籍の所在地が就学の基準となる。

最近では所有している居住証などで一定条件を満たした場合は、居住証のある地区で就学できるようになってきている。

2.中国の借読生という制度

借読生と学籍の関係

この戸籍がある地区で通う学校には、生徒の学校登録である学籍がある。この学籍がある学校以外の学校に通う生徒を借読生と呼ぶ。

たとえば、広東省A市に学籍がある生徒が親の仕事の都合により上海市内の学校に通っている場合、この生徒は上海市内の学校の借読生となる。この借読生の場合、通常より高い学費を払わなければならない。この学費は借読費と呼ばれる。

また、北京市A区に学籍がある生徒が北京市B区の有名な初級中学に通う場合、この場合もこの生徒は借読生となる。このケースでも借読費を払わなければならない。

表向きは廃止された借読費

じつは借読費は2010年12月に公表された通知にて表向きは廃止されている。これまでは借読生という他地域からの学生に対して、一定の費用を徴収しても良いと明記されていたが、この条項が削除されている。

ただ、借読費は廃止されたが、借読生という制度は継続している。そのため、借読費が廃止されたために、借読生の入学を認めないという新たな問題も起こっているようだ。

3.択校生という仕組み

択校生とは何か?

中国には択校生(ザーシャオション)と呼ばれる学生がいる。この択校生はどのような学生なのだろうか?択校生は日本の高校に相当する普通高級中学(高中)に進学するときに生まれる。中国でも日本と同様に高中に進学するときに入学試験を受けなければならない。この入学試験は中考と呼ばれる。

中国の中考とは?
中考は高中段階の学校(日本の高校に相当)に進学するための入学試験。毎年6月に実施されている。中考は通称で正式な名称は各地域で異なる。北京市は北京市高級中等学校考試、上海市は初中卒業統一学業考試が正式名称。

この入学試験の結果、希望する学校に入学できなかった場合、特別募集枠として入学する学生を択校生と呼ぶ。択校生として入学するには、択校費という特別な費用を支払わなければならない。

このときの特別な費用はスポンサー費用という意味の賛助費と呼ばれることもある。中国人がお金で子供の入学の問題を解決したという場合、択校生としてお金を払うことを指していることが多い。

択校生と借読生の違いは?

択校生と借読生の違いは何か?この違いは本人の学籍が通っている学校にあるかどうか。択校生は通っている学校と学籍がある学校が一致している。借読生は一致していない。

借読生はなぜ学籍を移さないのか?借読生は移さないのではなく、移せないケースが多い。たとえば、山東省に戸籍と学籍がある学生は、北京市などの地域をまたいだ都市の学校に通っていると学籍を移すことは難しい。

なぜなら、基本的に戸籍と学籍は同じ地域でなくてはならない。学籍の移動の前提として、戸籍の移動が問題となる。一方で、北京市内の学生は、市内に戸籍があるため、同じ市内の実際に通う学校に学籍を移すことも可能である。(了)

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