印象城(INCITY)!中国で勝ち残るショッピングモール
中国で成功している百貨店やショッピングモールはどのようなところだろうか?江蘇省の常熟市に印象城(INCITY)というショッピングモールがあるが、中国国内で成功しているショッピングモールのひとつ。消費者に受け入れられる理由は?
1.常熟市の印象城(INCITY)
常熟市(江蘇省)中心部にある大型ショッピングモール
上海市から長距離バスで約1時間半のところに位置する江蘇省の常熟市(じょうじゅくし)。この常熟市には70社ほどの日系メーカーも進出していて、ここで生活する日本人駐在員は少なくない。
この常熟市の中心部を走っている目抜き通りの海虞南路沿いに印象城(INCITY)という大型ショッピングモールは進出している。中国では百貨店やショッピングモールが乱立されすぎ、空きテナントが目立つところも少なくないが、この印象城(INCITY)は空きテナントがないほど活況だ。中国で苦戦している百貨店が多いなか、成功しているショッピングモールのひとつと言えるだろう。
- 江蘇省の常熟市とは?
- 常熟市は、江蘇省の蘇州市に属する県級市。総人口は150万人(2013年末)、面積は1,264㎡(神奈川県の半分ほど)。上海市から車で1時間半くらいのところに位置している。外資企業の誘致に積極的で、日系企業ではシャープ、住友ゴム、富士電機など合計70社ほどが進出している。
中間所得層を取り込んだ印象城(INCITY)
常熟市の印象城(INCITY)は2008年6月のオープン。この印象城(INCITY)は深セン市(広東省)に本拠地を置く印力集団(旧・深国投商置集団)という不動産会社が展開しているショッピングモール。総面積は4.6万㎡と東京ドームとほぼ同じくらいの大きさ。
印象城(INCITY)は、常熟市(江蘇省)以外では蘇州市(江蘇省)、杭州市(浙江省)、仏山市(広東省)、寧波市(浙江省)、武漢市(湖北省)、西安市(陝西省)などに出店している。競争がはげしく、土地価格の高騰している北京、上海、広州などの超大都市を避けているのが見えてくる。
この印象城(INCITY)が成功している理由は、分厚いターゲット層の中間所得層のニーズにうまくマッチしているからだ。ポイントとしては、全国チェーン飲食店の誘致、子どもの遊び場の設置、大型スーパーマーケットの併設だ。これらがうまく作用して、頻繁に消費者が印象城(INCITY)を訪れる仕組みになっている。
- 印力集団(旧・深国投商置集団)とは?
- 印力集団(旧・深国投商置集団)は、主に印象城(INCITY)というショッピングモールを全国に展開している不動産会社。本部は広東省深セン市。2003年4月設立。
2.印象城(INCITY)の特長は?
ショッピングモール内に子どもの遊び場!?
日本人の感覚からすると違和感があるが、印象城(INCITY)の建物の内側に子どもの遊び場を設置している。週末だけでなく平日も、小さい子ども連れで来客する人は少なくない。来客し続ける仕組みづくりがポイントのようだ。
高級百貨店の看板をかかげているところは、なかなか子どもの遊び場を店内に作りにくいが、中間所得層をターゲットとしたショッピングモールでは子どもの遊び場はまったく違和感を感じない。
必須の大型スーパー、ウォルマートやカルフールが人気!
中国で成功している百貨店、ショッピングモールの多くは、大衆的な大型スーパーマーケットを必ずと言ってよいほど誘致している。中国ではウォルマートやカルフールが人気の誘致対象だ。毎日、消費者が利用するスーパーマーケットを誘致できれば、ある程度の規模の消費者群を平日でも集めることができる。人が集まれば、さらに人が集まってくる。中国人は目的がなくても人が多い繁華街やショッピングモールをブラブラするのが好きだ。
いっぽう、上海市内で集客に苦労している百貨店は、スーパーマーケットを誘致していなかったり、価格の高すぎる高級スーパーマーケットを誘致して失敗しているところが少なくない。高級スーパーマーケットではリンゴが1個20元(約400円)くらいで販売されているが、そのような高級なものを買える人はそれほど多くない。それよりも1個5元(約100円)のリンゴを4個購入できる店のほうが集まってくる中国人消費者の数は多い。
- カルフールとは?
- カルフール(Carrefour)は、中国では家楽福(Jia Le Fu)という名前で運営している。1995年に中国本土に進出。2013年末時点で中国73都市、236箇所で大型スーパーを展開している。中国での従業員数は6万人。
3.印象城(INCITY)の飲食店
よく知られている全国チェーンの飲食店たち!
印象城(INCITY)では全国チェーンの有名な飲食店の誘致に成功している。中国では「レストランを選択し間違えた」という経験を日本にいるとき以上に経験してしまう。レストランの店内や料理が衛生面で不安だったり、価格が思っていたよりも割高だったり、美味しくなかったり。日本で経験するよりも初めて入ったレストランで失望してしまう経験は少なくないだろう。
中国では全国で展開されているチェーン店のレストランは人気が高い。とにかく期待を裏切られる可能性が少ないからだ。日本では初めて目にしたレストランの店頭でメニューを見て入店しても、大きく期待を裏切られることはそれほど多くないが、中国ではそうはいかない。
中国で生活する日本人の多くもチェーン店をさがす!
中国全土に300店舗を展開している香港資本の満記甜品。満記甜品は香港系デザートを提供している専門飲食店。中国本土で一番有名なデザート専門店と言っても過言ではないだろう。
集客力の高いマクドナルドやケンタッキー(KFC)
中国で中間所得層をたくさん集客しようと考えると、マクドナルドとケンタッキー(KFC)の集客力はかかせない。これら超定番のファーストフード店を誘致できれば、工場の作業員(ワーカー)からホワイトカラー層までさまざまな所得層の消費者を集客することができる。ホワイトカラー層にしぼれば、スターバックスコーヒーはきわめて強い集客テナントの代表。1杯30元(約600円)と高価格であっても、そのコーヒーを飲みにくる中国人は少なくない。
最近、中国人訪日旅行者の爆買(ばくがい)を耳にすることが多いが、やはり為替レートの影響が大きい。仮に「1元=約20円」と計算すると、スターバックスのラテ(tallサイズ)は日本円換算で約540円(27元)もしてしまう。
日本では中国人が来日すれば大量購入してくれるという認識があるが、上海市内の百貨店やショッピングモールを見ていると、中国人が割高に考えるものは売れていない。日本や韓国の為替レートが人民元対比で割安になったことで、これまでの爆買(ばくがい)の代表だった香港の旅行客は前年対比で減少傾向だ。訪日中国人旅行者の爆買(ばくがい)はいつまで続くのだろうか。(了)