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江蘇省の常熟市でヤオハン(八佰伴)発見!いまは中国資本に!

上海からバスで約1時間30分のところに位置する江蘇省の常熟市(じょうじゅくし)。常熟市中心部にある歩行者天国「方塔東街」に百貨店のヤオハン(八佰伴)がある。流通業界のソニーを目指し破たんした日系百貨店はなぜ今も中国に?

1.中国に残る百貨店「ヤオハン」

1997年の経営破たん、十数年過ぎても残るヤオハン!

江蘇省の地方都市である常熟市内を歩いていると、かつて有名な百貨店だったヤオハンを発見。ヤオハンは中国では八佰伴(バーバイバン)と呼ばれている。1997年に経営破たんしたはずのヤオハンが、なぜいまでも中国で営業されているのだろうか?

いまだに営業している理由を調べてみると、中国で百貨店として営業していたヤオハンの多くは、経営破たん後に切り売りされて名称変更されたものの、江蘇省にあったヤオハンの多くは香港系の華地集団が買い上げ、ヤオハンブランドのまま現在も営業されているからだ。この常熟市の歩行者天国にあるヤオハンは、いまでは完全に中国資本の百貨店。

(写真1)歩行者天国「方塔東街」にあるヤオハン(八佰伴)(江蘇省常熟市)

(写真1)歩行者天国「方塔東街」にあるヤオハン(八佰伴)(江蘇省常熟市)

ヤオハン(八佰伴)とは?
ヤオハンとは、1929年に静岡県で八百屋としてはじまったスーパー、百貨店、レストランなどを展開した小売企業。世界15か国で展開し、年間売上高は最高5,000億円。1997年に経営破たん。ヤオハンは1992年に外資企業としてはじめて中国の小売市場に参入。現在、中国で営業されているヤオハン(八佰伴)は香港系の華地集団が運営し、破たんしたヤオハンと資本関係はない。

そもそもヤオハンとはどんな企業だったのか?

ヤオハンは1997年に経営破たんしているので、それから20年近くが過ぎている。そもそも、ヤオハンとはどのような企業だったのか?1929年に八百屋としてスタートしたヤオハンは、小売商店としてどんどん拡大し、経営破たん前までにスーパー、百貨店、レストランなどを世界15か国に展開していた日系のグローバル小売企業の代表。

ヤオハンが成長していく時代において、日本国内では当時、ダイエー、西友、イトーヨーカドーなどが全国的にスーパーマーケットの展開を進めていた。そのため、ヤオハンは日本国内市場ではなく、海外市場を中心に店舗拡大を目指した。ソニーが海外で成功をおさめていたので、ヤオハンは流通業界のソニーになるため積極的に海外展開を進め、ブラジル、コスタリカ、シンガポール、アメリカ、カナダ、イギリスなどに進出した。

1990年にはヤオハングループの本部を香港に移し、1996年には本部を上海に移している。このような積極的な海外展開に日系金融機関からは反発があり、ヤオハンは数百億円の社債を発行して資金調達を行っていた。この資金調達に対して、業績がついていかず、資金返済が難しくなり1997年に経営破たん、という結末だ。

2.現在のヤオハン(八佰伴)の店内

地方都市では高級百貨店と言えるレベル!

常熟市の歩行者天国(方塔東街)のひと際目立つところに、現在は中国企業が運営しているヤオハン(八佰伴)がある。ヤオハンのなかに入ってみると、ほかの中国系の百貨店よりも高級感のある店内の雰囲気があり、10代の出稼ぎ労働者が入るような大衆的な百貨店ではない。

中国では百貨店やショッピングモールが過剰になっていて、テナント募集に苦戦するところが少なくない。そのような中で、この常熟市にあるヤオハンはテナント店舗の誘致に成功していると言えるだろう。空きテナントはほとんどない状態だ。

(写真2)吹き抜けになったヤオハンの店内のようす(江蘇省常熟市)

(写真2)吹き抜けになったヤオハンの店内のようす(江蘇省常熟市)

江蘇省の常熟市とは?
常熟市は、江蘇省の蘇州市に属する県級市。総人口は150万人(2013年末)、面積は1,264㎡(神奈川県の半分ほど)。上海市から車で1時間半くらいのところに位置している。外資企業の誘致に積極的で、日系企業ではシャープ、住友ゴム、富士電機など合計70社ほどが進出している。

ローカル百貨店よりターゲット層の所得レベルは高い!

ヤオハンの1階部分は化粧品と宝石売り場になっている。中国のローカル色の強い百貨店であれば、マクドナルドやケンタッキー(KFC)などの集客力の高い飲食店が1階に入っていることが多いが、このヤオハンにはそれらの飲食店は入っていない。

マクドナルドなどのファーストフード店はたしかに集客力が高いものの、暇つぶしの若者カップルや家族連れであふれ、高級感ある雰囲気がつぶれてしまう懸念も少なくない。ヤオハンの店内には収入の低そうな10代の若者たちはあまりいない。ヤオハンの店内の雰囲気はマレーシア系百貨店のPARKSON(パークソン、百盛)に似ている。

(写真3)ヤオハン(八佰伴)の落ち着いた店内(江蘇省常熟市)

(写真3)ヤオハン(八佰伴)の落ち着いた店内(江蘇省常熟市)

選別されたテナント、品の良いショップばかり

地方都市の常熟らしく、ヤオハンにはシャネルやルイヴィトンのような高級ブランドショップは入っていない。いっぽうで、品のよさそうな中国ブランドのアパレル、雑貨のテナントがたくさん出店している。上海の新世界大丸百貨にも入っているAdidas(アディダス)もヤオハンに出店していた。

(写真4)どのレベルのショッピングモールにもマッチするAdidas

(写真4)どのレベルのショッピングモールにもマッチするAdidas

1997年に経営破たんしたとはいえ、ヤオハンは中国がすごい勢いで経済発展した1992年ごろから中国に進出しており、40代以上の中国人にとっては印象的な百貨店ブランドになっているのだろう。いつまで経営破たんしたヤオハンブランドは続くのだろうか。(了)

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