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招商銀行だけでない、中国工商銀行も身分証の再確認が必要!

2011年12月5日に中国人民銀行が各銀行に対して、外国人の身分証明を再確認するように要求してから、すでに2年半が経過。少しまえに招商銀行の口座が凍結されたところ、別の銀行である中国工商銀行の状況について調べてみると・・・。

1.外国人は身分証明の確認が必要

中国の非居住者(外国人)に対する銀行口座の身分証明の確認

中国で利用している招商銀行の銀行口座が突然、利用できなくなったことを下記の投稿記事に書いた。外国で生活をしていて突然、銀行口座が利用できなくなると本当に困ってしまう。

中国の銀行口座、パスポートで身分証の確認しないと凍結?

とくに銀行口座を保有したまま日本に帰国したひとは、インターネットバンキングに急にアクセスできなくなり、状況がわからず困惑していることだろう。

招商銀行とは?
1987年に設立された招商銀行は、香港に隣接する広東省深セン市に本社を置いている。上海証券取引所に上場している。

中国人民銀行の指導意見

中国人民銀行(中央銀行)が通知した銀発[2011]254号(指導意見)により、2007年6月30日以降に銀行口座を開設した非居住者である外国人は身分証明書(パスポート)の再確認を求められている。

<指導意見の目的>(指導意見から一部抜粋)
2013年12月末までに、銀行業の金融機関は、法律に則って、銀行口座保有者の偽造や身分証明を偽って開設した虚偽口座、偽名口座、匿名口座を整理し、法律にしたがって身分が不明な銀行口座保有者へのサービスを中止すること。

<確認すべき対象口座>(指導意見から一部抜粋)
2007年6月30日以降に銀行口座を開設し、銀行口座の開設に使用した身分証明が非居住者の人民元口座

中国人民銀行とは?
中国人民銀行は中国の中央銀行(紙幣の発行など)。1948年12月に華北銀行、北海銀行、西北農民銀行が合併して河北省石家庄に設立。1949年2月に北京に移転。1984年に中央銀行の業務のみ従事するため、中央銀行の業務以外を新たに設立された中国工商銀行に移管。

2.中国工商銀行、人民銀行の確認対象と微妙に違う?

招商銀行の銀行口座が2014年5月から急に利用できなくなってしまったが、招商銀行の公式ホームページをよく見てみると、2013年4月22日付の通知で顧客に次の通知をしていた。

<招商銀行の通知>(ポイントのみ記載)

  • 中国人民銀行の銀発[2011]254号(指導意見)に基づいて、身分証明を確認する必要があること。
  • 確認が必要な対象者は2013年8月31日までに招商銀行に身分証明を再提出すること。

ただ、このホームページに掲載された通知を、どれだけの日本人が見ているだろうか。この通知がだされた2013年4月22日に中国に滞在していたものの、招商銀行からショートメッセージ(短信)やEメールを受けとった記憶はない。中国語が話せない外国人は多いので、電話で直接連絡してくることはないだろう。

(写真1)中国大手メガバンクの中国工商銀行

(写真1)中国大手メガバンクの中国工商銀行

招商銀行は2013年8月31日までに身分証明の確認を要求している。身分証明の再提出をしていない口座にたいして、締切期限から8ヶ月が経過した2014年5月に銀行口座を凍結することとなったというわけだ。

2013年4月18日付の中国工商銀行の通知

招商銀行以外の他の銀行はどうなっているのだろうか?中国の銀行トップ5のひとつである中国工商銀行も、2013年4月18日付でつぎの通知を出している。

中国工商銀行の通知>(ポイントのみ記載)

  • 中国人民銀行の銀発[2011]254号(指導意見)に基づいて、身分証明を確認する必要があること。
  • 2007年6月30日以前に居住身分証(中文:居民身份证)で開設した銀行口座(人民元建て)と、非居住身分証(つまり外国人パスポート)で開設したすべての銀行口座が身分証明の再確認対象であること。
  • ただし、2007年6月30日以降に業務のなかで当行が身分証情報を再確認した銀行口座を除く。
  • 確認が必要な対象者は2013年12月31日までに招商銀行で身分証明をすること。
中国工商銀行とは?
中国工商銀行は1984年、中国人民銀行から中央銀行の業務以外を引き継いで設立。2013年度の純利益は2,630億元(約4.3兆円)。個人顧客数は4.3億人。

中国工商銀行の通知を見ていて注目すべきところは、中国人民銀行の指導意見と異なり、2007年7月1日以降に身分証情報を再確認した銀行口座は対象から外れている点。つまり、文面から判断すると、銀行口座の開設には身分証の確認が必要になるため、2007年7月1日以降に身分証明書であるパスポートをつかって開設された外国人の銀行口座は再確認の対象から外れていると読めてしまう。

中国人民銀行の指導意見で求めている「2007年6月30日以降に開設された外国人の銀行口座」と中国工商銀行が求めている再確認すべき対象は大きくズレている。

2013年11月4日付の中国工商銀行の通知

中国工商銀行は2013年11月4日、銀行口座の身分確認に関して次の通知を出している。外国人の多くは通知を見ていないと思われるものの、2013年4月の通知と比べると、確認すべき外国人の銀行口座の対象が中国人民銀行の要求する対象に、こっそりと調整されている。

中国工商銀行の通知>(ポイントのみ記載)

  • 中国人民銀行の銀発[2011]254号(指導意見)に基づいて、身分証明の確認をする必要があること。
  • 今回の非居住者(外国人)の確認対象は、すべての銀行口座(人民元建て)。
  • 近日中に身分情報が確認できていない銀行口座に対して、1回目の通知を行う。それでも身分情報の確認ができない銀行口座に対して、2回目の通知を行う。通知の期限内に身分証明書の原本をもって、当行の営業拠点に提出すること。
  • 2回目の通知の期限内に身分証明の確認ができない銀行口座に対して、ATM、インターネットバンキングなどのサービスを停止する。

2013年4月の通知では、2007年7月1日以降に身分確認を行った銀行口座は対象外と明記されている。今回の通知では、この条件がなくなり、すべて外国人の銀行口座が確認対象となっている。

中国工商銀行の銀行口座を残して日本に帰国している日本人の多くは、銀行口座が凍結されているかもしれない。もし、中国工商銀行の銀行口座をもっていて、実際に銀行口座を凍結された人がいれば教えてほしい。(了)

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