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中国人の香港・マカオへの渡航、パスポートは必要なのか?

中国本土の人が香港・マカオに行くときパスポートは必要なのだろうか?この疑問にしっかり回答できる日本人はあまりいないだろう。パスポートは国外に渡航するときに本人の身分(国籍)を証明するもの。香港・マカオは国外なのだろうか?

1.中国人の香港・マカオ渡航

パスポートは不要、中国人の香港・マカオ渡航!

中国本土の人が香港やマカオに渡航するときに、外国人と同じようにパスポートは必要なのだろうか?結論はパスポートは不要だけれど、その代わりに往来港澳通行証と呼ばれるパスポート代わりの証明書が必要になる。すでに香港・マカオは中国本土に返還されているので、外国に渡航するときに利用するパスポートを利用するのは適切ではないからだ。

ちなみに、往来港澳通行証は中国人のあいだで「通行証」や「双程証」とよばれている。往来港澳通行証は5年間有効(16歳未満)と10年間有効(16歳以上)の2種類が用意されている。

(写真1)中国本土と雰囲気がガラッと異なる香港の街中のようす

(写真1)中国本土と雰囲気がガラッと異なる香港の街中のようす

香港は1997年7月1日にイギリスから中国本土(中華人民共和国)に返還ずみ。マカオは1999年12月20日にポルトガルから中国本土に行政権が返還され、香港とともに特別行政区として一国二制度で管理されている。特別行政区として通貨、法律、物価水準が中国本土から完全に独立して運営されている香港・マカオに、中国本土から自由に移動を認めるとさまざまな混乱を招くことを懸念し、中国本土と香港・マカオにあいだには出入境管理(出入国ではない)が行われている。

往来港澳通行証だけでは渡航できない!

中国人が香港・マカオに渡航するには往来港澳通行証が必要になるが、この往来港澳通行証だけでは渡航することはできない。この通行証のほかに、ビザ(査証)に相当する签注(QianZhu)とよばれる渡航許可が必要になる。まさにビザ(査証)と同じように、探親签注(親族訪問用、T)、商務签注(ビジネス用、S)、団体旅行签注(L)、個人旅行签注(G)、一時滞在签注(D)などの签注(渡航許可)が用意されている。

日本人がビザの求められる国にパスポートだけで渡航できないのと同じように、中国人も往来港澳通行証だけでは香港・マカオを渡航することはできない仕組みになっている。日本人は香港・マカオを訪問するときにビザなしで最長90日滞在できるため、日本人よりも中国本土の人のほうが香港・マカオ訪問の手間がかかるのが現在の状況だ。

なお、中国本土の人が台湾に渡航する場合は、パスポートに相当する大陸居民往来台湾通行証と签注(QianZhu)が求められる。この大陸居民往来台湾通行証は、香港・マカオへの渡航用とは別の通行証だ。

2.往来港澳通行証とは?

往来港澳通行証と签注(渡航許可)の取得は?

この往来港澳通行証と签注(渡航許可)は、中国の公安局出入境管理部門で申請することになっている。基本的には常住戸口(いわゆる本籍地)がある地区の公安局で申請することになっているが、渡航目的がビジネス目的(商務)のときは本人の職場がある地区で申請することができる。

この往来港澳通行証を申請するときは、写真、居民身分証、それから公安局が求めるその他の資料が必要になる。現在、申請時には指紋データが採取されている。香港・マカオへの签注(渡航許可)の個人旅行(G)は中国本土のだれでも取得できるわけではない。現在のところ、経済発展が進んでいる北京、上海、天津、南京などの合計49都市が対象になっている。そのうち、香港・マカオに隣接している広東省すべての都市の戸籍保有者は取得可能だ。

どのくらい香港・マカオに滞在可能なのか?

中国人の香港・マカオの滞在できる期間は签注の種類によって異なる。探親签注(親族訪問用、T)の場合は、配偶者(夫または妻)、親、子どもとの面会目的の探親签注を取得していたら最長90日間の滞在が認められている。祖父母や孫などの場合は最長14日と同じ签注でも最長滞在日数は異なる。

商務签注(ビジネス用、S)は基本的に7日間となっている。条件によっては複数回訪問可能なマルチビザの取得も可能だ。団体旅行签注(L)、個人旅行签注(G)も基本的に7日間となっているが、3か月間有効(1回または2回訪問)、1年間有効(1回または2回訪問)の2回訪問用のものも用意されている。

2014年5月からはカード式の往来港澳通行証に!

ビジネス出張でも個人旅行でも、中国人のほうが日本人よりも香港・マカオへの渡航制限が厳しいことがわかっただろう。往来港澳通行証の発行手数料は100元(約2,000円)で、签注(渡航許可)は有効回数1回は20元(約400円)、有効回数2回は40元(約800円)となっている。2014年5月からはカード方式の電子往来港澳通行証が発行されている。

広東省の深セン市、東莞市、中山市などの香港・マカオに隣接している都市に駐在している日本人のなかには「中国人はなぜ香港やマカオにあまり観光や買い物に行かないのだろうか?」と疑問に持っていた人も少なくないだろう。日本人よりも手続きが複雑で渡航しにくいというのが背景だ。(了)

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