中国の生活、ビジネスに役立つ情報を発信するサイト

中国の銀行、ATMで人民元紙幣の偽札防止の対応!

中国の銀行は偽札対応に力を入れている。上海市内のATMで、はじめて紙幣番号を印字したレシート(取引記録)を取得することができた。ATMの信頼を高め、利用者にATMの利用を安心してもらう意図が見える。

1.中国は偽札が多い

中国では偽札に注意!

日本で生活していると偽札を受け取ってしまう可能性は限りなくゼロに近いだろう。中国は日本と違い、かなり多くの偽札が世の中に流通している。中国で生活する場合、偽札をつかまないように日々注意が必要だ。中国人民元の紙幣のなかでも特に100元札(約1,650円)と50元札(約880円)は注意が必要だ。

(写真1)偽札の多い中国人民元の100元札と50元札

(写真1)偽札の多い中国人民元の100元札と50元札

ATMから引き出した現金に偽札が混じっている?

中国の日本人社会のなかでも、偽札の話題になることがある。ある日本人は「タクシーの運賃の支払いで100元札を差し出したところ、運転手から偽札だと言われた。あの100元札の偽札は大手某銀行のATMで1,000元(10枚の100元札)を引き出したなかの1枚だった」という話を耳にすることがある。

中国では「偽札」がATMから出てくる!(2013年7月26日付、J-CASTニュースから一部抜粋)

中国に頻繁に出張する、ある商社マンは、現地の銀行ATMから偽札が出てくることについて、「地方都市では、たまにあること」と、あまり驚く様子もない。というのも、同氏も1度だけ、偽札をつかまされたことがあったためだ。(中略)

ある日本人留学生は、大手銀行のATMで3000元を引き出したところ、そのうち700元(100元札7枚)が偽札だった。タクシー代を払うとき、運転手の指摘で気づき、銀行に訴え出たが、「ATMの中に偽札などあるわけない」と相手にされず、泣き寝入りしたとされる。

ほんとうにATMから偽札が出てきたのか真偽はわからない。しかし、中国の現地紙もATMから偽札が出てきたという報道を頻繁に行っており、ATMに不信感を持っているという声は多い。

中国の紙幣の最高額は100元札のため、買い物のお釣りで100元札を受け取ることはない。通常は銀行やATM以外から手にする機会は少ない。ただし、偽札をつかむのは必ずしもATMとは限らない。在広州日本総領事館は「NO.10:偽札に関する注意喚起(タクシー利用時)」(2012年10月15日付)でタクシー乗車時の偽札すり替えに注意するよう訴えている。

1.最近、広州市内の邦人の方からタクシー利用時での偽札被害に関する相談がありました。

2.発生状況は、市内から白雲空港までタクシーに乗車し、100元紙幣でタクシー運賃を支払った際、運転手が受け取った紙幣をその場でこっそり偽札にすり替えた上、「これは偽札だから使えない、別の紙幣を出しなさい」と突き返し、別の100元紙幣を求める。これを数回繰り返されたというものです。 (以下、省略)

中国人も現金のやり取りをするとき、偽札が混じっていないか注意を払っているのは間違いない。中国の銀行は、利用者から銀行の取り扱う現金に偽札が含まれていないという信用を高めていくことが必要である。

2.ATMで人民元紙幣の紙幣番号の印字とは?

中国のATMで紙幣番号が印字できる?

中国のATMは紙幣番号の印字ができるというのは本当なのか?2013年9月2日付の中国新聞網の報道によると、2013年9月から北京、上海、広州、南京の4都市のATMで紙幣番号の記録がスタートした。

これはATMから紙幣番号を記録したレシート(取引記録)をユーザーに渡すということではなく、銀行内部で取引番号ごとに渡した現金の紙幣番号を記録しているという取り組み。もし偽札が混じっていた場合、1ヶ月以内なら銀行で照合できる。

2013年9月2日付の新華網の報道によると、中国人民銀行の要求により、すべての商業銀行は段階的に次の対応を進めている。

  1. 2013年末までに、すべての商業銀行はATMから引き出される紙幣番号を記録する。
  2. 2014年末までに、すべての商業銀行は利用者がATMで現金を引き出す場合、紙幣番号が印字されたレシート(取引記録)を打ち出すことに対応する。
  3. 2015年末までに、すべての商業銀行は銀行窓口で扱うすべての100元札の紙幣番号を記録することに対応する。
中国人民銀行とは?
中国人民銀行は中国の中央銀行(紙幣の発行など)。1948年12月に華北銀行、北海銀行、西北農民銀行が合併して河北省石家庄に設立。1949 年2月に北京に移転。1984年に中央銀行の業務のみ従事するため、中央銀行の業務以外を新たに設立された中国工商銀行に移管。

実際に印字できるところは見たことなかった

紙幣番号が印字できるATMはすでに存在するのか?中国ではじめて紙幣番号を印字できるATMを見つけた。これまで中国の大手銀行のATMで紙幣番号を印字できるサービスが始まったというニュースを何度も目にしたことはあったが、実際に印字できるATMを見たことはなかった。上海市内の中国銀行のATMで実際に紙幣番号を印字することができた。

中国銀行とは?
中国銀行は国有商業銀行トップ5のうちの1つ。北京に本部を置く。1912年に孫文(孫中山)の承認により設立された中国銀行は、1912年から1928年まで中央銀行の役割を担っていた。
(写真2)紙幣番号を印字したレシート(取引記録)、白枠の英数字が紙幣番号

(写真2)紙幣番号を印字したレシート(取引記録)、白枠の英数字が紙幣番号

上記の写真の白い枠で囲った10ケタ毎の英数字は、ATMから実際に引き出した100元札の紙幣番号と一致している。この印字された紙幣番号は、ATMから出てきた順序で並んでいる。

(写真3)ATMで引き出した紙幣、印字された番号と紙幣番号は一致している

(写真3)ATMで引き出した紙幣、印字された番号と紙幣番号は一致している

 

3.100元札より大きな額面の紙幣は発行されない?

現在、中国で流通している紙幣のなかで、もっとも額面が大きい紙幣は100元札(約1,650円)。なぜ更に大きな額面の紙幣を発行しないのだろうか?

第11期全国人民代表大会(全人代)第5回会議(2012年3月12日)の記者会見で胡曉煉(コ・シャオレン)・中国人民銀行副行長(副頭取)によると、「一部でより大きな額面紙幣の要望はあるものの、いまのところ500元札や1,000元札の発行は予定していない」という。

大きな額面紙幣は(1)偽札紙幣が出回るとリスクが大きい(2)大きな額面だと釣り銭に手間がかかる、のが理由という。現在ではクレジットカードや銀行のデビットカード(銀聯カード)で大きな金額の取引ができるようになったことも大きな額面を発行しない背景にあるという。(了)

top of page