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上海新世界大丸百貨、南京東路の注目スポットとなるか!?

上海随一の観光スポット、南京東路に上海新世界大丸百貨が2015年5月15日にグランドオープン。大丸百貨店、松坂屋を運営している日系のJ.フロントリテイリングが運営支援をおこなっている。はたして中国人に受け入れられる存在になるか?

1.上海新世界大丸百貨がグランドオープン

上海で苦戦する百貨店の成功例になるか?

上海でもっとも観光客の多い南京東路。その南京東路の一等地にJ.フロントリテイリングが運営支援している上海新世界大丸百貨が2015年5月15日にグランドオープンした。J.フロントリテイリングは大丸百貨店や松坂屋を運営する持株会社。上海市内の百貨店やショッピングモールは過剰感があり、シンガポールに本社を置く凱徳集団(CapitaLand)が運営している凱徳竜之夢購物中心が、いまのところ独り勝ちの状況。

2012年12月にオープンした上海高島屋はかなり苦戦している。上海高島屋は開業当初130億円の売上高をかかげていたが、2度の下方修正をおこない当初の半分にも足りない59億円まで売上高がさがり、11億円ほどの営業赤字となった前例がある。上海高島屋は2020年ごろまでに黒字化を目指している。上海だけでなく中国では百貨店やショッピングモールに空きテナントが目立つところが目につくようになっている。

(写真1)超一等地にオープンした上海新世界大丸百貨(上海市黄浦区)

(写真1)超一等地にオープンした上海新世界大丸百貨(上海市黄浦区)

上海新世界大丸百貨
上海新世界大丸百貨は、外灘(バンド)から徒歩数分の距離に位置する百貨店。2015年5月15日グランドオープン。日本で大丸、松坂屋を運営するJ.フロントリテイリングがノウハウ提供をしている。J.フロントリテイリングは事業提携とプレスリリースしており、経営指導(ノウハウ提供)を行っている。資本参加については公表されていない。

龍をイメージした、らせん式エスカレーターが印象的!

上海新世界大丸百貨は中国の富裕層、準富裕層をターゲットにしており、上海のなかでも斬新なデザインの百貨店として注目を集めている。なかでも、中国初の導入となった「らせん式エスカレーター」は印象的だ。いっぽうで1階の吹き抜けフロアーには子供の目を引く展示物があり、高級感ある百貨店とのあいだにギャップを感じてしまう。

(写真2)中国初の「らせん式エスカレーター」、かならず乗ってしまう

(写真2)中国初の「らせん式エスカレーター」、かならず乗ってしまう

2.高級ブランドから大衆ブランドまで

富裕層や準富裕層のレベルは?

上海新世界大丸百貨は富裕層や準富裕層をターゲットにしており、外国ブランド品をできるだけ多く扱っている。国別ブランド構成は欧米ブランド約41%、日本ブランド約15%、中国ブランド約30%、その他約14%という割合と公表されている。ただ、上海新世界大丸百貨の想定している富裕層、準富裕層はどのくらいの所得層を考えているかは発表されていない。

数多くのシンクタンクが中国の富裕層に関する報告書を発表しているが、その富裕層の定義はまちまち。スイスの金融大手クレディ・スイスが2014年に発表した100万ドル以上の資産を保有している国別人数では、中国は118万人。ちなみに、日本は273万人。

いっぽう、ボストンコンサルティングが2012年に発表した報告書によると、中国の富裕層の定義は年間可処分所得が2万ドル(約240万円)以上としている。上海新世界大丸百貨はどのレベルの富裕層をターゲットにしているのだろうか。上海新世界大丸百貨は南京東路の超一等地に位置しているが、南京東路や外灘(バンド)は海外や中国の地方都市からの観光客が集まるところ。

どこまでショッピング目的の顧客を囲い込めるか不明なところも多い。店舗前を歩く人の数と店内の来店者の数をくらべると、百貨店のなかは驚くほど寂しい状況は気のせいだろうか。

(写真3)上海新世界大丸百貨にはアルマーニなどの高級ブランドも出店

(写真3)上海新世界大丸百貨にはアルマーニなどの高級ブランドも出店

アディダスなどの大衆ブランドも出店!

高級ブランドだけでなく、大衆ブランドとなっているadidas(アディダス)などのブランドも出店している。上海新世界大丸百貨は店内の斬新なデザインである一方、三越銀座店のような高級感あふれる雰囲気は出ていないのが心配だ。

(写真4)百貨店内のadidas(アディダス)、中国人の人気は高い

(写真4)百貨店内のadidas(アディダス)、中国人の人気は高い

なぜか小型電気用品メーカーのBraun(ブラウン)も出店!?

店内を歩いていると、シェーバーや電動歯ブラシを販売しているドイツ系のBraun(ブラウン)も店舗をかまえている。少しアンマッチな雰囲気はあるが、スタッフは丁寧に電動歯ブラシのセールスポイントを教えてくれる。

(写真5)エスカレーター近くの好立地にあるBraun(ブラン)の店舗

(写真5)エスカレーター近くの好立地にあるBraun(ブラン)の店舗

百貨店内は空きスペースも見られる!

来店前から上海新世界大丸百貨のテナントの出店状況について心配していたが、実際に店内を歩いていると空きスペースが気になるほどだ。上海新世界大丸百貨は上海市中心部の超一等地にあるためテナント料が高いのだろうか?テナント候補企業は集客力を様子見している状況か。

(写真6)広い百貨店内で広い空きスペースは目立つ(上海新世界大丸百貨)

(写真6)広い百貨店内で広い空きスペースは目立つ(上海新世界大丸百貨)

3.上海新世界大丸百貨のデパ地下戦略

輸入品の多い高級スーパー「Ole」

上海新世界大丸百貨の地下には高級スーパーの「Ole」が入っている。輸入製品も多く、たしかに雰囲気は高級百貨店にマッチしている。この高級スーパー「Ole」を運営しているのは中国の国有企業の華潤集団。中国資本のスーパーマーケットといっても高級感ある魅力的な商品がそろっている。

(写真7)上海新世界大丸百貨の地下に入っている高級スーパー「Ole」

(写真7)上海新世界大丸百貨の地下に入っている高級スーパー「Ole」

もしかして?さいたま市の「手焼き岩せんべい 小林屋」?

百貨店の地下にはレストランや食品売り場も多い。「小林せんべい」という1950年スタートの老舗もはいっている。日本人のなかで「小林せんべい」と聞いて、そのブランドをイメージできる人はいるだろうか?おそらく、埼玉県の大宮で60年間続いている「手焼き岩せんべい 小林屋」が提携または出資をしていると思われる。

(写真8)KOBAYASHI(小林せんべい)、上海新世界大丸百貨の地下にある

(写真8)KOBAYASHI(小林せんべい)、上海新世界大丸百貨の地下にある

中国では大都市だけでなく、地方都市でも大型のショッピングモールが乱立している状況だ。金あまりのためか、ここ数年のあいだに大型の不動産投資のようにショッピングモールが次々と建設されてきた。いっぽうで、採算があわないケースも多く、空きテナントが目立つショッピングモールは上海市内でも数多く見られる。「Cominng soon(開業まもなく)」と書かれたまま放置されている空きテナントは少なくない。上海新世界大丸百貨はオープンしてから3か月足らず、これからが勝負だが、いまのところ景気の良いニュースは流れてきていない。(了)

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