上海新世界大丸百貨、斬新なデザインと目立つ空きテナント!?
上海の南京東路の一等地に2015年5月15日、オープンした上海新世界大丸百貨。日本で大丸や松坂屋を運営しているJ.フロントリテイリングが事業支援を行っている。目を引く斬新なデザインの一方、百貨店内の大きな空きスペースが目立つ。
1.上海市の南京東路にある上海新世界大丸百貨
上海でも目立つ斬新なデザイン!落ち着いた雰囲気!
上海新世界大丸百貨が2015年5月15日にグランドオープン。場所は上海市の目抜き通りの一つである外灘(バンド)に近い南京東路。龍をイメージした中国初の「らせん式エスカレーター」を導入しており、奇抜なデザインが目をひく。
この百貨店のコンセプトは「ラグジュアリー性とエンターテインメント性を併せ持った今日的な新・高級百貨店」とされ、30代、40代の富裕層、準富裕層をターゲットにしている。上海を訪れる日本人も是非立ち寄ってみてもよいだろう。日本ではなかなか目にできない迫力の百貨店だ。
- 上海新世界大丸百貨とは?
- 上海新世界大丸百貨は、外灘(バンド)から徒歩数分の距離に位置する百貨店。2015年5月15日グランドオープン(2月からプレオープン)。日本で大丸、松坂屋を運営するJ.フロントリテイリングがノウハウ提供をしている。J.フロントリテイリングは事業提携とプレスリリースしており、経営指導(ノウハウ提供)を行っている。出資しているかは不明。
らせん式のエスカレーター!移動には時間がかかる
この百貨店のセールスポイントのひとつである「らせん式エスカレーター」に乗ってみると、その動きの遅さが気になってしまう。これまで経験したことのないエスカレーターに注目はするものの、あまりにも移動に時間がかかるので通常のエレベーターで最上階まであがり、そこからエスカレーターで降りて来るほうとよいだろう。
2.上海新世界大丸百貨の店内
地下2階~6階まで、ターゲット層は幅広い!
J.フロントリテイリングは30代、40代の富裕層、準富裕層をターゲットとしているものの、テナントとして入っている店舗をみるとadidas(アディダス)などの大衆的なブランドも少なくない。公表資料によると、欧米ブランド約41%、日本ブランド約15%、中国ブランド約30%、その他約14%となっており、中国ブランドが意外にも多い。もちろん、中国の地場百貨店にくらべると、中国ブランドの比率は少ないものの、高級感あふれる百貨店とどこかアンマッチな雰囲気がでているのは気のせいだろうか。
- J.フロントリテイリングとは?
- J.フロントリテイリングとは、百貨店の大丸や松坂屋を運営する大丸松坂屋百貨店やファッションビルのパルコを傘下にもつ持ち株会社。2007年9月設立。
上海では百貨店やショッピングモールに過剰感があり、先行して出店している上海高島屋はかなり苦戦していると報じられている。2014年5月29日付の第一財経日報では「現地にあわなかった、上海高島屋はブランド撤退の危機を簡単に解決できない」と苦戦している様子を報じている。実際、高島屋は地下1階の食品売り場と最上階のレストラン以外はほとんど買い物客がいない状況だ。上海新世界大丸百貨は上海のランドマーク的な百貨店になれるだろうか?
7階は増築可能、エスカレーターは休止中!
上海新世界大丸百貨をよく見てみると、7階は増築可能であるものの内装の施されていないスケルトン状態のままだ。7階に続く、らせん式エスカレーターも用意されているが休止状態。中国の百貨店やショッピングモールは、上海市内にいくつかある幅広い所得層向けの凱徳竜之夢購物中心という超人気ショッピングモール以外はほとんど苦戦している状態。テナント店舗は上海新世界大丸百貨が本当に高い集客力を持っているのか現段階では様子見の状態だ。
ちなみに、凱徳竜之夢購物中心は月収3,000元~1万元(約6万円~20万円)くらいの幅広い中間所得層を対象にしている。この凱徳竜之夢購物中心の地下にはカルフールやウォルマートなどの大衆向け大型スーパーが出店しており、日常的に来てしまう仕組みが人気のひとつ。富裕層向けというコンセプトが成功するか上海新世界大丸百貨の動向は高い注目を集めている。
- カルフール(Carrefour)
- カルフール(Carrefour)は、中国では家楽福(Jia Le Fu)という名前で運営している。1995年に中国本土に進出。2013年末時点で中国73都市、236箇所で大型スーパーを展開している。中国での従業員数は6万人。
テナントの空きスペースが目立つ、大丈夫か!?
富裕層向けの上海新世界大丸百貨が成功するかどうか不安な芽も見られる。じつは至るところにテナント出店スペースが空いたままになっているからだ。高い天井がさらに空虚感を増幅させている。
何もなくて寂しいスペース
数店舗分の空きスペースがあるところも見られる。上海の一等地にあるため、この上海新世界大丸百貨のテナント料はけっして安くはないだろう。空いたままになっているのはもったいない。
中国随一の繁華街といわれる南京東路には平日にもかかわらず、通りには観光客があふれかえっている。ただ、上海の南京東路や外灘(バンド)と言えば、海外や地方都市からの観光客が集まる観光名所。上海人は高級店舗があつまるのは淮海路と考えている。上海人は人通りの多い南京東路でのショッピングを避ける傾向があるが、上海新世界大丸百貨はその固定概念をはたして変えることはできるだろうか。まだグランドオープンしてから2か月。これからが勝負だ。(了)