中国は国公立大学が多い?知られていない不思議な独立学院
中国は国公立大学が多いのか、それとも私立大学が多いのか?日本人のあいだで、あまり知られていない有名大学の独立学院というのは、どのような位置づけの大学なのだろうか?1999年からスタートした中国の独立学院とは?
1.中国の公営大学と民営大学
中国には国公立大学である公営大学が多い
中国には民間が経営している大学もあるが、政府機関から資金をもらって運営している国公立大学に相当する公営大学のほうが多い。中国教育部(文部科学省に相当)が発表している2012年末の中国本土にある大学総数は2,442校。
そのうち公営大学は1,736校で、日本の私立大学にあたる民営大学は706校となっている。日本の文部科学省のホームページで記載されている日本の大学総数(短期大学は含まず)は合計707校。そのうち、国公立大学は169校(国立大学86校、公立大学83校)で、私立大学は601校となっている。
日本では私立大学が国公立大学にくらべて圧倒的に多い、中国では日本の国公立大学にあたる公営大学が多い。中国の4年制大学の数は1,145校で日本の707校より多いものの、中国と日本の人口規模の違い考えると、4年制大学の入学競争率は中国のほうが高いと言えるだろう。
中国の公営大学と民営大学の違いは?
中国の公営大学は、政府機関が設立した大学である。これらの公営大学は政府の財政支援をもらいながら運営している。民営大学は企業や社会団体または個人が設立した大学で。民営大学は政府の財政支援をもらわずに運営している。
中国の大学は政府の主管部門が設置されており、公営大学は教育部、省(自治区、直轄市)などの中央政府または地方政府が主管している。民営大学の主管部門は、地方政府である省(自治区、直轄市)の教育庁または教育委員会となっている。
公営大学と民営大学の学費の違いは?
公営大学と民営大学の学費の違いはどのくらいあるのだろうか?公営大学である北京大学の2014年の学費は、年間5,000元(約8.3万円)。上海市の公営大学である華東師範大学は、専攻する学科によって少し違いはあるものの年間5,000元から5,500元の学費となっている。
民営大学である北京経貿職業学院の場合、学費は年間7,800元(約12.9万円)。上海東海職業技術学院は年間10,000元(約16.5万円)。一般的に民営大学の学費は公営大学よりも高い。
2.日本人が知らない中国の有名大学の独立学院とは?
民営大学にある303校の独立学院とは?
中国の4年制大学の民営大学のなかに、独立学院という分類がある。これは一体どのような学校なのだろうか?
独立学院にはどのような大学があるのか見ると、北京郵電大学世紀学院、首都師範大学科徳学院、上海外国語大学賢達経済人文学院、中山大学南方学院、華南理工大学広州学院など。大学名だけ見ると、中国の一流大学と言われる重点大学の名前がついている。
中国の一流大学である浙江大学と杭州市政府は提携して、1999年に浙江大学城市学院を設立したのが独立学院の始まりである。半官半民で運営される大学と言われており、母体となる公営大学が運営ノウハウを提供し、大学の施設や運営費はすべて民間の企業や団体・個人が提供する仕組みになっている。
母体となる有名大学の名前がついているものの、大学キャンパスやカリキュラムは母体の大学とはまったく異なる。関連する法律により、1つの公営大学が設立できる独立学院は1つだけと決められている。
名称から判断しにくい独立学院
広東省広州市に中山大学という一流大学がある。公営大学である中山大学と半官半民の中山大学南方学院は、この2つの大学のキャンパスは異なることはもちろん、大学運営の資金管理も完全に独立した学校である。つまり、まったく別の大学である。
中山大学のなかには、大学内に二級学院と呼ばれる学院(学部に相当)がいくつか設置されている。たとえば、中山大学国際商学院、中山大学外国語学院、中山大学旅遊学院、中山大学法学院など。
中山大学だけでなく、中国の多くの大学で二級学院が設置されているが、大学内の学部に相当する二級学院と独立学院はまったく異なる存在である。
独立学院は入学しやすいのか?
一流大学の母体大学の名前がついた独立学院は入学しやすいだろうか?中国で大学に入学するには、原則として日本の大学入試センター試験にあたる普通高等学校招生全国統一考試(以下、高考)を受験する必要がある。
この高考の受験結果により、入学を志願できる大学が限られる。中国は大学ごとにランクが分かれていて、第一批次本科、第二批次本科、第三批次というように分かれている。これらは一本大学、二本大学、三本大学と呼ばれることもある。高考の点数が第一批次本科の足切りラインを超えた受験生のみ、第一批次本科の大学を志願することができる仕組みになっている。
北京大学、清華大学、中山大学の学科は、第一批次本科に属している。中山大学南方学院などの多くの独立学院は第三批次本科に属している。
独立学院の卒業証書や学位はどうなるのか?
独立学院は1999年にスタートして、2003年までに300校以上に膨れ上がった。有名大学名を学校名称に使用している独立学院の卒業証書はどうなるのか?
もともとは独立学院を卒業すると、有名大学である母体大学の卒業証書と学士学位証をもらえていた。教育部の規定により、2003年に入学した学生から卒業証書は独立学院、学士学位証は母体大学が発行することに変更になった。2008年4月に施行された規定により、卒業証書と学士学位証ともに独立学院が発行することとなった。
- 中国の学位
- 中国では日本と異なり、卒業証書と学士学位証明は分かれている。在学中の評価がきわめて低かったり、カンニングが見つかった場合、学士学位証を取得できないケースがある。
独立学院の学費は?
独立学院の学費は、公営大学や他の民営大学よりも高い。北京工商大学嘉華学院は年間2.5万元(約41万円)。浙江大学城市学院は年間2.6万元(約43万円)。重慶大学城市科技学院は年間1.8万元(約30万円)。公営大学の年間の学費は6千元(約9.9万円)前後であり、独立学院の学費の高さが目立ってしまう。
独立学院の学生数は?
2014年に中国本土の大学本科に在籍している学生総数は1,427万人いる。大学専科の964万人を加えると、中国本土の大学には2,391万人もの学生が在籍している。1999年に新しく出てきた大学本科の独立学院は、278万人(大学本科の約19%)の学生が在籍している。大学本科の5人に1人は独立学院の学生。
2012年末に中国に独立学院は303校あり、278万人の学生数から試算すると、1校あたり約1万人近い学生が学んでいる。けっして小さな大学ではない。(了)