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中国の経済適用房とは?普通の分譲マンションとの違いは?

中国の住宅売買はそれほど古い歴史はありません。中国の改革開放政策のころから住宅の市場化(商品化)がはじまり、1998年ごろにようやく現在の形になりました。この変化のなかで生まれた経済適用房とは、どのような住宅でしょうか?

1.いろいろな中国の分譲マンション

中国の住宅売買の歴史は20年足らず!

中国にはいろいろな住宅があります。そもそも中国で住宅不動産が完全に自由に売買できるようになったのは1998年からです。中国の住宅売買は20年も過ぎておらず歴史は古くありません。中国では1978年~1988年の住宅の市場化(商品化)の試験期間を経て、1989年ごろから少しずつ住宅不動産の市場での売買が進んできました。正式に自由化されたのは1998年です。

中国の住宅制度改革とは?
中国の住宅制度改革とは、1978年からスタートした鄧小平主導の住宅の商品化。もともと中国では政府機関、国有企業などの従業員の住宅は職場から提供されていた。1978年から段階的な住宅制度の変更がはじまった。1998年には住宅支給制度が廃止され、現在の金銭の収入から住宅購入という仕組みに完全に移行された。

経済適用房というマンション

現在、中国の普通の住宅は商品房とよばれる分譲マンション(区分所有建物)が一般的です。この一般的な商品房は建物と土地使用権の2つの部分から構成されています。中国では土地の所有権の購入はできず、普通住宅であれば70年間の土地使用権を購入します。あくまでも土地を使用する権利です。

この商品房が発展していく中で、低所得者向けの経済適用房という分譲マンションがでてきました。中国政府の社会保障政策のひとつとして、低所得者に対して持ち家(マイホーム)を購入できるようにするための政策です。この経済適用房は建物の所有権を購入しますので、いわゆる商品房に該当しますが、普通の商品房とは違いがあります。具体的にどのような違いがあるのでしょうか?

2.普通商品房と経済適用房の違い

面積や間取りが異なる!

中国の低所得者向けである経済適用房は普通商品房(分譲マンション)とくらべて、部屋の広さは狭く、間取りにも制限があります。中国の経済適用房は「経済適用住房管理弁法」という基本的な法律に基づいていて、その第15条で基本的に建築面積60㎡以内と明記されています。ちなみに、この低所得者という定義は、各都市の経済発展の状況に違いがあるため都市ごとに定められています。

この15条に補足明記されていますが、経済適用房の住宅面積の基準も都市の経済発展状況によって変更できることになっています。部屋の間取りも同様で、各都市によって基準が設定されます。

中国の建築面積とは?
建築面積とは、実際に利用できる部屋の面積に敷地内の共有スペース(配電室、共有廊下、エレベーターホールなど)の分配された面積です。中国の高層マンションでは建築面積の70%~80%が使用面積(部屋の面積)といわれています。 日本の専有面積はバルコニー(ベランダ)部分を含んでいないが、中国の建築面積ではバルコニーの面積も含んでいる。

販売価格が異なる!

経済適用房は普通商品房にくらべて、かなり低価格で販売されることになっています。そもそも購入対象者が低所得者層であり、その人たちの購入できる予算額にも制限があります。この経済適用房は規定に基づいて販売価格を決めなければなりません。これは経済適用房の販売価格について定めた「経済適用住房価格管理弁法」に明記されています。

住宅価格はマンション建設にかかったコストに税金と利益を加えて販売されますが、経済適用房ではその利益は総建設費のプラス3%以内と決められています。しかも、その総建設費には住宅に必要なインフラ設備の費用を含んでいません。これらのインフラ設備の費用は政府が負担するからです。いっぽう、普通商品房は不動産開発業者が自由に販売価格を設定することができます。

所有権が異なる!

経済適用房にはマンションの所有権に制限があります。分譲マンションには建物と土地使用権の所有権がありますが、その土地使用権には制限があり売却するときには土地使用権に対して現金の補填が必要です。

中国には払下土地使用権(中国語では「出譲土地使用権」)と割当土地使用権(中国語では「劃抜土地使用権」)の二種類があります。経済適用房のマンションは、割当土地使用権の上に建設されます(「経済適用住房価格管理弁法」第7条)。経済適用房を建設する不動産開発業者は、無償または割安な補償金を支払って割当土地使用権を取得しています。

いっぽう、一般的な普通商品房は払下土地使用権として取得した土地の上に建設されます。この払下土地使用権は市場価格の代金を支払って、一定の期間の土地の使用権利を得ているものです。

経済適用房に居住しているときは土地使用権の違いは問題になりませんが、その住宅を売却するときに経済適用房であれば新たに補償金(現金の補填)を地方政府に支払わなければなりません。なお、経済適用房のマンション登記証明書には「経済適用房」と「割当土地使用権」であることが明記されています。

購入から5年以内に売却できない!

経済適用房は購入してから5年以内に売却できません。そもそも経済適用房は低所得者向けの社会保障政策のひとつです。経済適用房の購入者が安易に売却できないように制限されています。ただし、特別な理由(居住者の死亡など)で売却しなければならないときは、利用年数を差し引いて購入原価で政府が買い戻すこともあります。

基本的に賃貸に出せない!

経済適用房は賃貸マンションとして貸出することができません。どうしても貸出したい場合は、土地使用権の補償金を支払って普通商品房と同じ払下土地使用権に変更しなければなりません。

購入者は住宅ローンでも優遇される!

経済適用房の購入者は、中国の住宅積立金を優先的に利用することができます。中国の住宅積立金は、企業と従業員個人が毎月の給与から一定比率で拠出して積み立てている政策的な社会保障制度です。従業員の住宅取得を奨励する制度です。

中国の住宅積立金とは?
中国の住宅積立金は、企業と個人が拠出する住宅に関する積立金。サラリーマンは加入義務となっている。拠出された積立金はすべて個人に所有になる。住宅購入のための貯蓄という位置づけだけでなく、積立額に応じて低利率の住宅ローンを借りることもできる。

この住宅積立金はこれまで積み立てた金額を利用できるだけでなく、低金利の住宅ローンを借りることも可能です。この住宅ローンなどの手続きにおいて、経済適用房の購入予定者は優先して手続きしてもらえることになっています。(了)

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