中国の賃貸の法律「商品房屋租賃管理弁法」に何が書いている?
中国では賃貸契約に関する法律がたくさんあります。北京の中央政府が公布している法律から、地方政府が公布している条例や規定まで。とくに専門家である不動産仲介会社を通さない人は、ざっくり中国の規定を理解しておきましょう。
1.中国の賃貸の法律
契約法(合同法)だけでない賃貸に関する法律
中国で賃貸に関する法律というと契約法(合同法)という法律があります。この契約法で定められている賃貸に関する規定は、かならず守らなければならない必須の内容です。
この契約法以外にも、中国には商品房屋租賃管理弁法という法律があります。中国の契約法で書かれていることは賃貸契約に関する一般的な内容です。この内容をさらに詳しく定めたものが商品房屋租賃管理弁法になります。
商品房屋租賃管理弁法のほうが契約法より新しい
中国の契約法は1999年10月に施行されていて、すでに10年以上も経過しています。いっぽう、商品房屋租賃管理弁法は2011年2月に施行されており、契約法よりもずいぶん新しい法律です。
契約法で定められている賃貸に関する内容は、おおむね商品房屋租賃管理弁法に含まれています。中国の賃貸に関して理解するには、商品房屋租賃管理弁法をざっくり理解しておくと良いでしょう。
2.「商品房屋租賃管理弁法」には何が書いている?
賃貸契約に含めるべき内容
この商品房屋租賃管理弁法の第7条で、中国の賃貸契約にかならず含めるべき内容が定められています。日本でアパートを賃貸する場合、契約書を修正してもらうことはなかなかできませんが、中国では気になる部分があれば不動産仲介会社や物件オーナーである大家と相談して修正してもらいましょう。
- 賃貸人と賃借人の住所と氏名
- 賃貸物件の面積、構造、付帯設備、家具・家電の状況
- 家賃と保証金(デポジット、中国語では押金)の金額と支払い方法
- 賃貸契約の期間
- 賃貸物件の故障時の修理負担先(どちらが負担するか)
- マンション管理費、光熱費などの支払い(に関する事項)
不動産仲介会社を利用して賃貸物件を契約する場合、仲介会社が賃貸契約のひな形を用意しています。この賃貸契約には上記の商品房屋租賃管理弁法で求めている内容が含まれていますので、仲介会社を利用する場合は心配ありません。
台所、洗面所、ベランダ、地下室のみの居住としての賃貸はダメ
中国ではマンションの一室を複数に仕切ったり、二段ベッドを持ち込んでシェアハウスとして貸し出すケースがあります。最近では一室に10人から20人くらい居住する群租房(チュンズーファン)とよばれる賃貸形式が社会問題になっています。
- 群租房とは?
- 群租房は、マンションの一室を仕切りでわけて十数人が居住する状態。マンションの賃借人が、大家の知らないあいだに群租房として又貸し(転貸)するケースが多いようです。北京、上海などでは安全に不安のある群租房に対して通報制度をとり、取り締まりをおこなっています。
この群租房は安全面での不安や、騒音などにより近隣からのクレームを受けることが多いようです。さすがに日本人のなかで群租房に住んでいる人はいないと思いますが、中国では台所、洗面所などだけを居住場所として貸し出すことは法律で禁止されていますので覚えておいてもいいかもしれません。
賃貸契約しているあいだは家賃の値上げは原則ダメ!
商品房屋租賃管理弁法の第9条において、賃貸契約期間の途中に家賃を一方的に値上げすることを禁止しています。いっぽうで、日本と異なり家賃相場の上昇が続いている中国では、契約更新時には家賃を値上げされることが一般的です。
日本人のなかには長期滞在を前提にして2年契約を締結する人もいますが、トラブルが起きたときに途中解約となり保証金が返ってきませんので注意が必要です。
また地方独自の規定にも注意が必要です。上海市では上海市居住房屋租賃管理弁法の第15条で「1年以上の賃貸契約ならば、年1回だけ賃料の改訂をしてもよい。ただし、ほかに契約での取り決めがある場合を除く」と定められています。
このため、上海市では2年契約を締結していても「契約期間中に賃料の改訂はしない」と記載していないと法律を用いて家主から賃料改訂を要求されるかもしれません。
又貸し(転貸)は大家の同意が必要
商品房屋租賃管理弁法の第11条において「又貸し(転貸)する場合は大家である賃貸人の書面での同意が必要である」と明記されています。反対に、大家の書面での同意がない又貸し(転貸)物件は違法ですので、又貸し物件の場合はかならず大家の書面の同意書のコピーを入手するようにしましょう。
賃貸物件は不動産賃貸登記が必要
中国で賃貸マンションを借りると、かならず不動産賃貸を主管している政府期間で不動産賃貸登記を行う必要があります。賃貸契約を締結してから30日以内に登記しなければいけません。
不動産仲介会社を通している場合は、この不動産登記を代理で行ってくれることが一般的です。不動産仲介会社を通さずに賃貸する場合は注意が必要です。
(了)