中国の生活、ビジネスに役立つ情報を発信するサイト

中国で中古マンション購入時に住宅積立金を借りる場合は?

中国人が中国国内で中古マンションを購入するとき、商業ローンといわれる一般的な住宅ローンだけでなく、住宅積立金ローンといわれる低金利の借入を行うことも可能です。この住宅積立金ローンとは、いったいどのような仕組みでしょうか?

1.中国の住宅積立金

そもそも住宅積立金とは何か?

中国には住宅積立金という制度があります。この住宅積立金は中国国内にある企業や団体と従業員本人によって資金が拠出され、従業員は住宅取得や住宅リフォームなどにその資金を利用できるという制度です。従業員の住宅取得などの進めるという目的だけでなく、中国政府は住宅市場の発展を意図して制定した制度です。

中国の住宅積立金とは?
中国の住宅積立金は、企業と個人が拠出する住宅に関する積立金。サラリーマンは加入義務となっている。拠出された積立金はすべて個人の所有になる。住宅購入のための貯蓄という位置づけだけでなく、積立額に応じて低利率の住宅ローンを借りることもできる。

具体的な制度の内容は?

中国の住宅積立金制度は2002年に施行された「住房公積金管理条例」という基本制度に則っています。この住宅積立金は企業と従業員個人の両者が拠出しますが、拠出された住宅積立金はすべて従業員個人の資産になります(管理条例の第3条)。

「住房公積金管理条例」第18条によると、企業と従業員個人ともに給与の5%以上を毎月積み立てなければならないと規定されています。1ヶ月5,000元(約10万円)の額面給与の従業員は、企業側250元(約5,000円)と従業員側250元(約5,000円)のあわせて500元(約1万円)を毎月積み立てていきます。この給与の5%はあくまでも最低限の比率であり、地方政府が別途ルールを定めることができます。上海市では企業側7%、従業員個人側7%となっています。

従業員は蓄積された住宅積立金を住宅取得や住宅リフォームに利用できるだけでなく、住宅積立金制度を活用した住宅ローン(住宅積立金ローン)を利用することも可能です。

住宅積立金ローンと金融機関の住宅ローンの違いは?

住宅積立金制度を活用した住宅ローンと金融機関の貸し出す一般的な住宅ローン(商業ローンとよばれる)の違いはどこにあるのでしょうか?住宅積立金を利用した住宅ローンは、ほかの住宅ローンよりも貸出金利は年率2%ほど低くなっています。

2015年3月時点の住宅積立金の貸出金利を見てみると、年率3.5%(貸出期間:1年~5年)、年率4.0%(同:5年以上)となっています。いっぽう、金融機関が行う住宅ローン(商業ローン)は、年率5.7%(同:1年~5年)、年率5.9%(同:5年以上)と約2%ほど高い貸出金利になっています。

これらの貸出金利は中国人民銀行(中央銀行)が公表している基準金利に連動しますが、基準金利が変更されても住宅積立金の住宅ローンのほうが低い貸出金利に設定されるのが一般的です。

中国人民銀行とは?
中国人民銀行は中国の中央銀行(紙幣の発行など)。1948年12月に華北銀行、北海銀行、西北農民銀行が合併して河北省石家庄に設立。1949 年2月に北京に移転。1984年に中央銀行の業務のみ従事するため、中央銀行の業務以外を新たに設立された中国工商銀行に移管された。

2.住宅積立金の借入方法は?

住宅積立金管理センターへの申請

この住宅積立金を利用した住宅ローンはどのように行われるのでしょうか?まず、中古マンションの取得を考えている購入予定者は、住宅積立金管理センターという公的機関に借入申請を行います。住宅積立金管理センターは住宅積立金に関する日常的な事務手続きから予算、決算の策定などを行っている公的機関です。この住宅積立金管理センターは地方都市ごとに設置されています。

この借入を申請するときには、借入予定者の身分証明書、収入証明書、購入予定の中古マンションの購入契約書などの必要な書類を提出します。これらの書類を受け取り、住宅積立金管理センターは借入可能額などの審査を行います。住宅積立金管理センターは申請を受けてから15日以内に審査結果を決定して連絡することになっています(管理条例の第26条)。

住宅ローン担保センターによる審査

借入予定者が住宅積立金管理センターに住宅ローンの申請を行うと、同時に住宅ローン担保センターという公的機関が担保の設定や個人の与信状況について審査を行います。基本的には取得予定の中古マンションに対する担保価値を審査します。

北京市の北京市住房貸款担保中心のホームページによると、住宅ローン担保センターの役割として(1)担保費用が安い、(2)手続きが早い、(3)保障が手厚い、ことを挙げています。とくに住宅ローン担保センターは保障が手厚く、住宅ローンの借入主の死亡やいくつかの重病(高度障害など)になると、返済されていない住宅ローン残高が免除されます。日本で住宅を購入するときに加入しなければならない団体信用生命保険(死亡や高度障害時に保険会社が返済)のような役割を果たしています。

団体信用生命保険とは?
団体信用生命保険とは、住宅ローン返済途中での死亡や高度障害になった場合に、本人にかわって保険会社が住宅ローン残高を支払う保険。通称は団信(ダンシン)。残された家族は住宅ローンの未返済残高を返済する必要がなくなる。日本では基本的に住宅ローンを貸し出す金融機関から加入を求められる。

金融機関による住宅積立金ローンの実施

住宅積立金管理センターが住宅ローンの実施に問題ないと判断すると、住宅購入を予定している借入主は金融機関に住宅積立金による住宅ローンを申請します。住宅積立金管理センターはあくまでも住宅積立金の管理などを行っていて、資金の貸出自体は行っていません。

住宅積立金による住宅ローンであっても、借入契約自体は金融機関と締結することになります。房地産交易中心(不動産取引センター)での中古マンションの売買の妥当性判断の審査が完了して名義変更が完了すると、金融機関は売主に住宅ローン相当額を送金します。(了)

top of page