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中国の公有住宅(公房)とは?住宅改革で私有化された住宅!

中国では今では日本と同じように分譲マンション(商品房)が自由に売買されています。このような中国での住宅売買の仕組みは歴史が浅く、完全に住宅売買が自由化されてから20年も過ぎていません。以前は中国では公有住宅が主流でした。

1.中国の公有住宅(公房)

中国の公有住宅とは?

中国には歴史的な経緯から公有住宅という住宅があります。中国語では公房(ゴンファン)とよばれる住宅です。中国では1998年まで政府機関、国有企業、事業単位(日本の独立行政法人に相当)などで働く従業員は職場から住宅支給されていました。この住宅支給制度は1998年に廃止され、それ以降は現在の売買による住宅購入制度に移行しています。もちろん、1998年に急に住宅支給制度が廃止されたわけではなく、1978年からスタートした改革開放政策から段階的に制度変更が進められてきました。

このような経緯により、過去に職場から支給された公房を私有化(購入)するという手続きが発生しました。なぜなら、もともとの公房の所有権は国が保有していたからです。中国ではこの私有化された公房は「已購公有住房」と言われ、通称は「房改房」と呼ばれています。この住宅の私有化を行うことで、従業員個人がその住宅の建物と土地使用権の所有権を持つことができます。

中国の住宅制度改革とは?
中国の住宅制度改革とは、1978年からスタートした鄧小平主導の住宅の商品化。もともと中国では政府機関、国有企業などの従業員の住宅は職場から提供されていた。1978年から段階的な住宅制度の変更がはじまった。1998年には住宅支給制度が廃止され、現在の金銭の収入から住宅購入という仕組みになった。

2.住宅改革による公有住宅の私有化

3つの私有化の方法(市場価額、コスト価格、標準価格)

中国の公有住宅の私有化には3つの方法があります。中国の公有住宅の私有化については、1994年7月に国務院(内閣に相当)から公布されている「都市住宅制度を深化させる決定」の第四章(第14条~24条)に詳しく規定されています。市場価額、コスト価格、標準価格の3つの売却方法があります。

市場価額による売却、購入後は自由に売却可能!

ひとつは、市場価額での購入です。公有住宅以外の取引されている住宅と同じ価格帯で買い取る方法です。この方法で購入した公有住宅では、買い取った従業員は完全な建物と土地使用権(土地)の所有権を持つことができます。この住宅はいつでも市場で売却することも可能です。

ここで注意が必要なのは、あくまでも土地については、その土地の所有権ではなく、土地使用権(普通住宅は70年)という利用する権利です。中国では都市部の土地の所有権は国が持っています。

コスト価格による売却、土地使用権の権利がない!

ふたつ目は、コスト価格での購入です。このコスト価格には、土地取得のための立退き料、住宅設計費、建設費用、住宅区のインフラ整備費、管理費、建設資金の借入利息などが含まれています。このコスト価格には建物の使用年数を50年と考え、建物の使用経過年数に応じて減価償却(古くなった分を控除する)も考慮されます。

いっぽう、このコスト価格には土地使用権の金額は含まれていません。この住宅は購入から5年経過すると市場で売却できるものの、売却前には土地使用権相当額の納付が必要になります。

標準価格による売却、もっとも制限が多い買い取り方法!

もうひとつは、標準価格による売却です。この標準価格は、公有住宅の利用者がもっとも低価格で購入できる仕組みです。政府機関や国有企業などの公有住宅の所有者がコスト価格では居住者が購入できないと判断し、コスト価格よりも低い価格で居住者に売却します。

この標準価格で購入した公有住宅は、コスト価格に対する標準価格の比率分しか住宅の所有権を保有できません。この住宅の所有権には建物のみで、土地使用権は含まれていません。この住宅の購入から5年経過すると市場での売却も可能ですが、土地使用権相当額を差し引いた残りを所有権の比率に応じた売却額のみ受け取ることができます。

3.その他の住宅との違いは?

私有化された公有住宅と普通商品房との違いは?

中国の公有住宅の私有化は、つまりは公房から普通商品房への移行です。そもそも、普通商品房とは日本と同じように売買されている普通の住宅です。マンションの場合であれば分譲マンション(区分所有建物)になります。

さきほどの市場価額で私有化された公有住宅と一般的に販売されている普通商品房に権利の違いはありません。いっぽう、コスト価格や標準価格で私有化された公有住宅の場合は、住宅の建物や土地使用権の所有権が制限されていますので、普通商品住宅と所有権に違いはあります。日本人で中国の私有化された公有住宅を購入する人は少ないと思いますが、中古マンションを購入するときには、その住宅の所有権について注意しておいたほうが良いでしょう。(了)

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