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中国の高校入試である中考とは?どのような仕組みなのか?

あまり日本人に知られていない中国の高校入試。この高校入試は中考と呼ばれている。中国の高校入試はどのような仕組みになっているのだろうか?中国社会では大学入試だけでなく高校入試でも激しい競争が行われている。

1.中国人にとっての高校入試

けっこう高い高校段階の進学率

中国では義務教育が終了すると、大部分の人は日本の高等学校に相当する普通高級中学(高中)や中専と呼ばれる職業高級中学、中等専業学校などに進学する。この高中と中専をあわせて高中段階の学校とよばれている。

中国の高校段階の学校への進学率は予想以上に高い。中国の教育部(文部科学省に相当)が公表している統計データをみると、高中段階の学校に進学する割合は初級中学(初中)の卒業者のうち88.4%(2012年)となっている。

中国のなかでも経済発展が進んだ都市の進学率はさらに高く、上海市では96.7%(2013年)、山東省済南市では98.1%(2014年)となっている。ちなみに日本の高等学校への進学率は2010年、98%(定時制学校など含む)となっている。

高中段階の学校とは?
高中段階の学校とは、普通高級中学(高中)や中専と呼ばれる職業高級中学(職高)や中等専業学校(中専)、技工学校(技校)を指す。中専の学生は三校生とも呼ばれる。中専は日本の工業高校や産業高校などの専門高等学校に相当する。

中国の高校入試である中考とは?

中国の中学校に相当する初級中学3年の学生は、基本的に中考(または中考招生)と呼ばれる試験を受けなければならない。この中考という名称は、中国全体で使われている試験の通称。中国の地域によって、中考の正式名称は異なっている。中考は毎年6月に行われている。

北京の正式名称は北京市高級中等学校考試、上海市は初中卒業統一学業考試、広州市は初中卒業生学業考試となっている。教育部の通知により、中考で一定の成績を取らなければ初級中学の卒業証書を取得できないと規定されている。

2.高校入試に相当する中考の仕組み

試験内容は地域で異なる?

中国の大学入試である高考は、各省(自治区、直轄市)のなかでは同じ内容のテストが実施されている。中考はどうだろうか?直轄市である上海市は「市」と名称があるものの、広東省や遼寧省、広西チワン族自治区などの省レベルと同じレベルの行政単位である。その上海市では、市内で同じテスト内容となっている。

一方、中国の華南地域にある広東省では、その下部の行政単位である広州市や深セン市などの地級市と呼ばれる行政単位ごとに実施している。そのため、広東省内でも各地域でテスト内容は異なる。

中国の直轄市とは?
中国の直轄市とは、中央政府が直接管理する都市。現在の直轄市は、北京市、天津市、上海市、重慶市の4都市。直轄市の共産党委員会書記は、現在25名いる中国共産党中央指導部の中央政治局委員を兼任している。つまり、中国共産党の序列25位(トップ25)に入る幹部がつとめている。

試験科目は?

中考にはどのような試験科目があるのだろうか?試験科目は各地域で異なる。北京市の場合、試験科目は国語、数学、外国語、物理、科学、体育の合計6科目で580点満点となっている。上海市の場合は、合計6科目で630点満点の試験となっている。この他に合否のみを判定する理科の実験と思想品徳(日本の道徳に相当)の2科目がある。

3.中考はどのような仕組みなのか?

上海市の受験システム

中国の初級中学(中学校)の学生は、どのような選考方法で高中(高等学校)段階の学校に合格しているのだろうか?上海市を例にすると、基本的に高中段階の学校に進学を希望する生徒は、中考を必ず受験しなければならない。

高中段階の学校への合格方法は、大きく2つある。1つは、提前招生録取志願と呼ばれる推薦制度を活用するもの。もう1つは、統一招生録取志願と呼ばれる一般選考だ。

提前招生録取志願と呼ばれる推薦制度

提前招生録取志願は、上海市内に55校ある示範性高級中学と呼ばれる普通高級中学を対象にした推薦入学制度。示範性高級中学の合格者のうち、約40%が推薦制度により募集されている。上海市の示範性高級中学は、上海中学、華東師範大学附属第二中学、上海交通大学附属中学など有名な高中がある。

示範性高級中学とは?
示範性高級中学は、数年前までは重点中学と呼ばれていた進学校。現在、政府機関では重点中学という言葉を使わず、示範性高級中学という言葉を使っている。しかし、中国人のあいだでは今でも重点中学と呼んでいる。

この推薦制度は中考を受験する前に、学校独自で行われる面接試験や筆記試験などにより仮合格を出している。仮合格を得たうえで中考を受験し、上海市で統一されている示範性高中の最低合格ラインを超えると正式に合格となる。

2014年の推薦制度による最低合格ラインは、630点満点のうち少なくとも550点が求められている。この550点を下回ると、一般選考として合否を審査される。推薦制度で合格した場合、必ず合格した高級中学に入学しなければならない。

統一招生録取志願と呼ばれる一般選考

統一招生録取志願と呼ばれる一般選考はどうなっているのだろうか?上海の一般選考は大きく4段階に分かれている。中考を受験したあと、受験前に提出していた志願表にもとづいて1段階から順番に審査されていく。ある高中から合格が内定した時点で、次のステップに進むことはなくなる。具体的な選考方法は次のとおり。

  • まずは「零志願(ゼロ志願)」と呼ばれる選考。上海市内の示範性高級中学を志願することができる。ただし、自分が所属している初級中学が属している区(地域)にある示範性高級中学は志願できない。2014年の合格最低ラインは568点(630点満点)。
  • 次に「名額分配」と呼ばれる選考。自分が所属している初級中学が属している区(地域)にある示範性高級中学を志願することができる。2014年の合格最低ラインは550点(630点満点)。
  • ここまでで合格できていない学生は、「平行志願」と呼ばれる選考に進む。最大15校まで志願先を記入することができる。この中には、公営や民営の高中、中専と呼ばれる学校を選ぶことができる。ただし、志願先は自分の通う初級中学が所属している区(地域)の学校に限定される。2014年の公営の高中の最低合格ラインは510点(630点満点)。中専の最低合格ラインは350点(630点満点)。
  • 「平行志願」でも合格できない場合は、「征求志願」と呼ばれる追加募集に進む。「平行志願」が行われたあと、募集定員が残っている高中は追加募集をおこなう。この追加募集に応募することを「征求志願」という。

上海市の中考は、通っている初級中学が所属している区(地域)にある高中に進学することを基本としている。区(地域)をまたいだ示範性高級中学に入学するには、推薦制度や零志願を利用して中考で一定の点数を取る必要がある。(了)

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